マイナンバー改正法成立…その利用範囲はどのように広がるか

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マイナンバー改正法、公開される

当ブログでも度々引用させていただいている、内閣官房の特設サイト「マイナンバー 社会保障・税番号制度」。去る9月10日、いわゆる「マイナンバー改正法」の全文と新旧対照表、そしてその概要がこのサイトで公表されました。

時期を逸してしまい、今更な感は若干否めませんが、今回の投稿では法改正によってマイナンバーの利用範囲がどのように広がっていくのかを取り上げてみたいと思います。

預金口座へのマイナンバー付番、その影響とは

特設サイトで公開されている「改正法概要」によると、今回の法改正によりマイナンバーの利用範囲は以下のように拡大されるようです。

1.預金口座へのマイナンバーの付番

2.医療等分野における利用範囲の拡充

3.地方公共団体の要望を踏まえた利用範囲の拡充

これらの変更点のうち、「1.預金口座へのマイナンバーの付番」について簡単にご説明します。かつては、一つの金融機関に同一名義で好きなだけ預金口座を開設できる時代が有りました。またその当時は今と違って本人確認もそれほど厳密ではなかったため、それぞれの口座に新旧字体の入り混じった名義が登録されている事も珍しくなかったのです。

一例として、「髙橋 惠」(仮名)という方を例に挙げてみます。この方が同じ金融機関に複数の口座を開設した場合、新旧字体の表記方法によって「髙橋 惠」「高橋 恵」「髙橋 恵」というそれぞれ異なる表記で名義を登録してしまう可能性が有り得るのです。

預金口座とマイナンバー

現在では口座開設の際に本人確認を実施し、住所・氏名・生年月日を併せて登録しますから、そのデータを照合すればたとえ表記が違っていようとも同一人物か否かの判断は容易にできるはず…とお考えの方も少なくないでしょう。

しかし名義として登録されている字体が違っている以上、それらの口座が全て同一人物の所有する口座と完全には断定できません。実際、私が郵便局に勤めていたころ、「名義人と同姓同名で生年月日も同じである赤の他人が、名義人が転出した後に同じ住所へ引っ越してきた」というケースに遭遇したことも有るのです(かなりのレアケースではありますが)。

複数口座に登録された名義の字体がそれぞれ異なっている以上、金融機関としては、それらの名義人が同一人物か否かを確認する必要が生じます。そのために少なからぬ時間や労力を注ぎ込まざるを得ないケースだって有り得ます。

そこで、住所氏名生年月日等の個人情報と併せ、マイナンバーも預金口座に登録しておけば、複数口座の名義人が同一人物か否かの判断がより精密に行えるという訳です。

預金口座とマイナンバー2

この変更によって、具体的にどのような影響が生じるか。一つには、ペイオフの際に各名義人の預貯金額の合算を容易にかつ正確に行える点が挙げられます。

ペイオフ」とは、かいつまんで言うと、金融機関が破たんした際に名義人一人あたり元金1000万円とその利息まで預金保険機構が補償してくれる制度を指します。ペイオフにおいては、普通預金や定期預金といったほとんどの預金が補償の対象となりますが、外貨預金など一部の預金は制度の対象外です。

ペイオフの際の補償はあくまで「名義人一人あたり」で行われるため、名義人が複数の預金を同じ金融機関に預けているような場合には、それらを合算して総額を算出する必要が生じます。そんな時、マイナンバーも併せて預金口座に登録しておけば、合算作業も簡単に行えるという訳です。

また、各金融機関が保有する預金資産の正確な把握が可能になる点や、生活保護支給決定の際の資力調査がより正確に行えるといった点も、マイナンバー付番の影響として挙げられるでしょう。

予防接種の履歴もマイナンバーと紐づけ

今回の変更点についてもう一つ、「2.医療等分野における利用範囲の拡充等」についても簡単に取り上げます。「概要」によると、この変更により「予防接種履歴について、地方公共団体間での情報提供ネットワークシステムを利用した情報連携を可能とする」としています。

乳幼児を抱えるご家庭では、お子様に対し各種ワクチンの予防接種をされているケースも多いと思われます。しかしワクチンの接種は時期や回数が不適切だとむしろ悪影響にもなりかねないため、通常は母子健康手帳にそれらを記録して適切な接種を図ります

しかし市や県をまたぐような引っ越しの際、誤って母子健康手帳を紛失してしまったようなケースでは、ワクチンの接種履歴を正確に把握することが困難になってしまいます。そうなると必要な時期に必要なだけの予防接種ができなくなってしまい、子どもの健康を損うおそれが生じます

ワクチン予防接種

乳幼児が予防接種をした際の記録がマイナンバーとともに自治体に残され、各自治体で相互により取りができるようになれば、引っ越しをした後も適切な接種が可能になるという訳です。

改正法における三つの変更点のうち、「3.地方公共団体の要望を踏まえた利用範囲の拡充等」については私の専門外のため言及を控えさせていただきます。

以上、改正法についておおまかに考察してきました。すでに様々なメディアで報じられているように、マイナンバーの利用範囲は更に拡大していく事が予想されます。今後、どのような変化をしていくのでしょうか。当ブログでも可能な限り取り上げていきたいと考えています。