マイナンバー利用目的に関するQ&A…保護委員会HPより

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特定個人情報保護委員会のQ&Aコーナー

当ブログにて、これまで何回か取り上げてきた「マイナンバー」制度。以前にも書きましたが、住民票を有する全ての個人にマイナンバーが通知されるのは今年10月から。つまり、現時点で残り半年を切っているわけです。

制度の実施が近付いている中、様々な形での周知活動も始まっています。先月からは政府広報によるテレビCMやインターネット広告が始まりましたし、弁護士の先生や税理士の先生によるマイナンバー講演会も各地で開かれているようです。

しかし制度の認識が広まれば、「○○の状況ではどう対応すれば良いのか」「××の書類にはどう記入すれば良いのか、またどう扱えば良いのか」等といった疑問も数多く生ずるもの。そういった数々の疑問に応えるべく、特定個人情報保護委員会のHPではQ&Aのコーナーを設けています。それが、こちらのページです。

今回のエントリーでは、このコーナーに掲載されているQ&Aの中から、特に社会保険労務士(以下「社労士」)の実務に関係の深い項目をいくつかピックアップしていきたいと思います。以前公開された「ガイドライン」よりも更に実務に即した内容となっていますので、実務担当者の方は注目です

マイナンバーの取得時の疑問点

まずは、マイナンバーの利用制限に関するQ&Aから。

Q.複数の個人番号関係事務で個人番号を利用する可能性がある場合において、個人番号の利用が予想される全ての目的について、あらかじめ包括的に特定して、本人への通知等を行ってよいですか。
A.事業者と従業員等の間で発生が予想される事務であれば、あらかじめ複数の事務を利用目的として特定して、本人への通知等を行うことができます

社労士の実務においてマイナンバーの利用が予想されるのが、「労働保険・社会保険に関する各種書類の作成と提出代行業務」と「給料計算」です。これらの業務において、ハローワークに提出する書類(雇用保険被保険者取得届)の作成や年金事務所に提出する書類(健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届)の作成といった複数の事務でマイナンバーを利用することとなります。

ガイドラインにも在るように、関連する事務手続きのために他人からマイナンバーを取得する際には、その利用目的を特定しなければなりません。しかし利用する手続きが複数に渡る場合、それぞれの手続きごとに利用目的を特定して取得する、というのでは膨大な作業になってしまいます。

それを防ぐため、最初に取得する際に『雇用保険に関する事務手続きに使用するため。社会保険の事務手続きに使用するため。労災保険に関する事務手続きに使用するため』(注:あくまで一例です)といったように包括的に列挙する事が認められている、ということです。

続いて、同じく利用制限のQ&Aより。

Q.本人から個人番号の提供を受けるに当たり、利用目的について本人の同意を得る必要がありますか。
A.個人番号の利用目的については、本人の同意を得る必要はありません

個人的な感想ですが、この回答は少々意外でした。マイナンバーの提供を受ける際には、本人に対して利用目的の「通知」さえしていれば良く、「同意」まで得る必要は無いというのです。

もっとも、各種書類へのマイナンバーの記載は法律や省令によって義務付けられていますから、そこに当事者の意向が入り込む余地は無いということなのでしょう。

中小企業における既存従業員への対応

Q.個人情報保護法が適用されない個人番号取扱事業者は、個人番号の利用目的の特定をする必要がありますか。
A.個人情報保護法が適用されない個人番号取扱事業者は、個人情報保護法第15条に従って利用目的の特定を行う義務はありませんが、個人番号を「個人番号関係事務又は個人番号利用事務を処理するために必要な範囲内」で利用しなければならない義務が課されます(番号法第32条)。個人番号を「個人番号関係事務又は個人番号利用事務を処理するために必要な範囲内」で利用するに当たっては、個人番号をどの事務を処理するために利用するのかを決めることとなりますので、事実上、利用目的の特定を行うことになると考えられます。なお、利用目的の本人への通知等を行う必要はありません

このQ&Aも、利用制限に関するものです。上記の文中に出てくる「個人情報保護法が適用されない個人番号取扱事業者」につき、ガイドラインでは以下のように定義しています。

特定個人情報ファイルを事業の用に供している個人番号関係事務実施者又は個人番号利用事務実施者であって、国の機関、地方公共団体の機関、独立行政法人等及び地方独立行政法人以外のもの(番号法第31条)から、個人情報取扱事業者を除いた者

そして個人情報取扱事業者とは、以下のようなものを指します。

個人情報データベース等を事業の用に供している者…であって、個人情報データベース等を構成する個人情報によって識別される特定の個人の数…の合計が過去6か月以内のいずれの日においても5,000を超えない者以外の者 (一部省略)

ちょっと分かりずらい表現かもしれませんが、ほとんどの中小企業は「個人情報取扱事業者」に該当しないと考えて差し支えないでしょう。ただし中小企業であっても、金融機関やレンタルビデオショップなど顧客の個人情報を多く抱える業種の場合は「個人情報取扱事業者」に該当する可能性が有るので注意が必要です。

今年10月から、個人に対しマイナンバーの通知が始まる事は冒頭に記しました。このQ&Aを読む限りでは、個人情報取扱事業者でない限り、既存の従業員からマイナンバーを取得する際に利用目的の通知まではしなくて良いようにも思えます。

その辺りの実務はどうなるのかは、通知開始が迫ってきた時点でより詳細なガイドラインが公表されることでしょう。現時点ではあまり断定的に捉えず、更なる発表を待つのが得策ではないかと思われます。

今回のエントリーはここまで。その他のQ&Aについては次回以降、取り上げます。