個人情報一元管理への不安…マイナンバーによる行政事務の変化とは

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個人情報一元管理への不安

各個人へのマイナンバー通知が、いよいよ近付いてきました。それに伴う事象なのでしょうか、私が仕事でお会いする方々との会話の中でもマイナンバーが話題になることが増えてきたように 感じます。

マイナンバーが話題に上がる度、皆さまが異口同音に口にされるのが「国による個人情報の一元管理」に対する不安や懸念です。マイナンバーが導入されることにより、ご自身の住所や氏名、生年月日は勿論のこと、税金の納付状況や社会保険の加入状況まで全て国によって一元的に把握されてしまうのではないか。このように心配されている方が多くいらっしゃるのが現状ではないでしょうか。

そこで今回の投稿では、内閣官房のマイナンバー特設サイトで公表されている資料に基づき、マイナンバー制度と国による個人情報管理との関係についてちょっとした検証をしてみたいと思います。

マイナンバーが活かされる事態とは

さて現在の時点でも、都道府県や市区町村といった地方公共団体、労働基準監督署やハローワークといった行政機関、そのほか日本年金機構や全国健康保険協会は、皆さまの個人情報を取得し保管しています

それらの機関は個々の個人情報に独自の番号(例えば日本年金機構の場合は基礎年金番号、ハローワークの場合は雇用保険被保険者番号)を付し、それぞれが別々に管理しています

しかし時として、行政機関が保有する個人情報を相互にやり取りする必要が生じる事態が起こります。その一例として挙げられるのが「特別支給の老齢厚生年金受給者による求職の申し込み」です。

厚生年金保険に1年以上加入していた方が一定の年齢に達した際に支給されるのが、老齢厚生年金です。この老齢厚生年金は65歳以上の方に支給されるのが原則なのですが、現在は経過措置として61歳以上64歳までの方にも老齢厚生年金の一部が支給されます。これを特別支給の老齢厚生年金といいます。

一方、60歳を超えてからも雇用保険の適用事業に雇用されている方は、一部の例外を除き雇用保険の被保険者となります。この方が61歳以上の時点で失業し、ハローワークに求職の申し込みをした場合、ハローワークからの失業給付(法律上は「求職者給付の基本手当」)と特別支給の老齢厚生年金とが同時に支給されうる事態が生じます

このような場合、ハローワークからの失業給付と特別支給の老齢厚生年金とは同時に受け取る事はできません。失業給付を受けている間、特別支給の老齢厚生年金は支給停止されます。

失業給付と老齢年金

ここで、ハローワークと日本年金機構は、それぞれが保管している個人情報を相互にやり取りする必要が生じます。

前述したように、ハローワークと日本年金機構とはそれぞれ独自の番号を用いて個人情報を管理しています。そのため、「求職の申し込みをした人物」と「特別支給の老齢厚生年金を受給している人物」との同一性の確認が非効率的になっていました

政府の広報資料によれば、マイナンバーの導入により、複数の機関に保管された同一人物の個人情報が紐づけられるとしています。そうすることにより、行政事務の効率化適切で無駄の無い給付が図れる、というのがマイナンバーの効果として挙げられているようです。

相互連携

併せて、マイナンバーは国が個人情報を一元管理するために導入する制度ではない事も強調されています。マイナンバー導入後も、各行政機関等が保有する個人情報は引き続き分散管理され、国が個人情報を一元管理する事は無い、としています。

誤ったイメージ

人事労務管理の専門家として

これまで当ブログでは、マイナンバーについて特に異議を唱えるような事はしてきませんでした。当ブログは社会保険労務士事務所のウェブサイト内に開設されています。社会保険労務士は、人事労務管理の専門家として国に認められた独占資格です。そういう性質のブログである以上、個人の勝手な憶測や思い込みに基づいた文章を投稿する事はできません

内閣官房の特設サイト内で「国家による個人情報の一元管理はしない」「各種書類へのマイナンバー記載は法令で課せられた義務である」と謳われている以上、明確な根拠も無しにそれらの記述を否定することは出来かねます。よって、今後も当ブログではマイナンバーが正式に導入される事を前提とし、中小企業に求められる対応等について情報発信していく所存です。

もっとも、買い物の際に番号カードをレジに提示する、という消費増税還付案には反対の立場をとらせていただきます。この案はあくまでも財務省案に過ぎずまだ覆せる余地が有る事、年間数千円の還付金を受け取る代償としては番号カードを常時携帯するリスクがあまりに高すぎる事が主な理由です。

皆さまはどのようにお感じになるでしょうか。マイナンバーへの不信や不安がまだまだぬぐえない方も多くいらっしゃるでしょう。仕事の現場でそのような方と対峙した時にどのように対処するべきか、容易ならざる課題が社労士に突き付けられてるように思われます。