就業規則は会社の敵?味方?

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ここしばらく、労働者側の視点に立った記事が続いていましたので、今回は会社側から見た問題を取り上げてみましょう。

仕事の現場で就業規則はどう扱われているか

私自身が見聞きした話もそうですし、他の社労士の先生方からお聞きした話もそうなのですが、会社経営者の方々には「就業規則は労働者になんか見せない」「鍵のかかる金庫や引き出しの中に仕舞ったまま」という人が少なくないようです。

おそらく、就業規則を労働者に見せてしまうことで、無暗やたらに年次有給休暇を要求されてしまったり、法外な額の残業代を支払うよう請求されてしまうのではないかという不安から、そのような行動に出てしまうのではないかと推測します。

しかし、本当にそれは「会社を守る」行為と言えるのでしょうか?結論から申し上げれば、私の考えは全くの逆です。「法的な根拠に基づくきちんとした内容の就業規則を作り、それを社員に広く周知させること」それこそが、真に会社を守る手段なのです。なぜそう言い切れるのか、以下にその根拠を示します。

就業規則を使って会社を守るには

サービス残業の問題にしろ、解雇や労働条件の引き下げといった個別労働紛争の問題にしろ、労使間でトラブルが発生した際には「当事者間でどのような内容の労働契約が交わされていたか」が必ずと言っていいほど問題になります。労働契約の内容次第で残業代の算出結果が大きく異なってくる、ということは前回のエントリーで取り上げた通りですし、解雇や懲戒処分の有効性があっせんの場で取り上げられる際には「就業規則で解雇事由や懲戒処分の対象行為をどのように定めていたか」が間違いなくチェックされます。

そんなとき、いいかげんな内容の就業規則を定めていたり、労働者への周知義務(労働基準法106条で義務付けられています)を果たしていなかったらどうなるでしょうか?○○時間分の固定残業代として払っていたつもりの役職手当であっても、そのことが就業規則や労働条件通知書に定められていなければ、残業代削減の効果は有りません。これも、前回のエントリーで取り上げた通りです。また、就業規則上の懲戒事由に該当することを理由として労働者に懲戒処分を下そうとしても、それを周知していなければ「そんな事は知らされていない。この処分は権利を濫用した不当な行為だ」という反論を許すことになってしまうのです。

もっとも、仮に就業規則として明文化されていなくても、会社と労働者との間で或る程度反復継続されてきた慣行で有れば、就業規則と同等の労使慣行として認められる余地は有ります。しかし、どれだけ反復継続されればそのように認められるかについて明確な基準は有りません。よって、「ウチの会社は就業規則なんかで定めなくても、社員のみんなは分かってくれている」というやり方は極めてリスクが高いと言えるでしょう。

ちなみに年次有給休暇ですが、これは法律で「6か月以上継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者には10日以上の年次有給休暇を与えなければならない」と労基法39条で定められている以上、就業規則を見せるか見せないかの問題ではありません。労働契約法13条で、就業規則よりも法律や労働協約が優先する旨が定められているので、例え「年次有給休暇は年に5日まで」と定めて周知したところでそれは無効となります。「法律でそのように定められているのだからやむを得ない」という或る種の割り切りも必要となるでしょう。これに対しては、時季変更権の行使などで対応することとなります。

以上見てきたように、労使間のトラブルに対する会社側の備えとしては、「会社の行為を正当化するための明確な根拠」が重要になります。そしてそのために必要なのが、「法的な根拠に基づくきちんとした内容の就業規則」とその周知なのです。「法的な根拠に基づく内容の就業規則」はともかく、「労働者への周知」と聞くと、一人ひとりの労働者に対して就業規則の内容を一字一句説明しなければならないのではないかと懸念される方もいるかもしれません。しかし、ご心配いただかなくても大丈夫です。労働者への周知に関しては、事務室や休憩室などに就業規則を常備しておき、いつでも誰でも読める状態しておけばそれで足ります。内容に対する理解を深めるための努力義務こそ会社側に課せられているものの、これらの状況を備えておけば、いざ労働者から「就業規則なんて見たこと無い」と言われても「周知義務は果たしている。見たことが無いというのはそちらの落ち度だ」と会社が反論する事も可能になります

就業規則の作成は、専門家にお任せください

就業規則については、税理士や行政書士といった他士業が作成したものを使っていたり、書籍やパンフレットに紹介されているひな形を改編しただけのものを使っている会社も少なくないようですが、それは非常に危険な行為です。また、社労士以外の士業が就業規則の作成をして報酬を得る行為は法違反となりますので、その意味でも好ましくありません。就業規則の作成は、人事労務管理の専門家である社労士にお任せください。当事務所でも、随時承っております。お問い合わせは、こちらのお問い合わせフォームをご利用いただくか、022-718-8284 までお願いいたします。