通知カードの受け取りを拒否しても刑罰の対象にはならない!?

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通知カード受領拒否への関心の高さ

ブログやwebサイトを開設している皆さんの多くがそうであるように、私もgoogleアナリティクスを導入して当サイトの大まかなアクセス解析をしています。もっとも、私の文系脳では表示されるデータの全てが理解できているわけではありませんが…。

それはさておき、アクセス解析をして驚かされるのが「マイナンバー 拒否」「マイナンバー 受け取り拒否」といった検索ワードで当ブログを訪れる方が大変多いという事実です。これまでブログで公開してきた記事の中に「通知カードの受領拒否でマイナンバーは破綻する!?」というのが有るのですが、どうやらこの記事がgoogle検索結果の上位に表示されている様子。

10月1日時点で、既にこの記事には累計数万件ものアクセスが寄せられており、facebookの「いいね!」も1,000件を超えました。また、記事の内容へのご批判やマイナンバーへの不安や不信感といった様々なコメントもいただいております。

まさに今、今回の投稿を作成している時点でも同記事には多くのアクセスが寄せられており、皆さまの関心の高さが伺われます。そこで今回は、「通知カードの受け取りを拒否するとどうなるのか」「マイナンバーの記入を拒否するとどうなるのか」に絞って記事を書いてみることにしました。

通知カードの受領拒否やマイナンバーの記入拒否は国から罰せられるのでしょうか?

刑罰の対象になる行為とは

以前の記事でもご紹介したように、いわゆるマイナンバー法では一定の行為に対して懲役刑や罰金刑といった刑罰が科せられることになっています。最も重いもので4年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金又は併科、軽いものでも6月以下の懲役又は50万円以下の罰金となっており、個人情報保護法などと比べると大変重い刑罰が定められています。

しかしこれらの刑罰の対象となる行為は、大雑把に表現すると「マイナンバーを横流しした」「マイナンバーを盗み出した」「特定個人情報保護委員会の命令に違反した」「番号カードを不正に取得した」といった行為に過ぎません。

裏を返せば、「市町村から送られてきた通知カードの受け取りを拒否した」とか「役所に提出する書類へのマイナンバーの記入を拒否した」という行為そのものが直接に刑罰の対象となるわけではない、という事になります。

マイナンバー7受領拒否

また、マイナンバー法では国や地方公共団体、そして事業主の責務を定めていますが、これらの中で事業主に課せられているのは「基本理念にのっとり、国及び地方公共団体が個人番号および法人番号の利用に関し実施する施策に協力するよう努める」責務です。

これも見方を変えれば、「役所に提出する書類にマイナンバーを記入するよう従業員を説得したが、応じてくれなかったのでマイナンバー未記入の状態で提出せざるを得なかった」という場合には事業主の努力義務違反とまでは言えないということになるでしょう。

マイナンバー記入拒否

これらを総合して考えるに、10月5日以降に市町村から送られてくる通知カードの受け取りを拒否したり、役所に提出する書類へのマイナンバー記入を拒否したからといってすぐには懲役刑や罰金刑を科せられたりはしない、と言えそうです。

刑罰の対象にはならないかもしれませんが…

それでは、市町村から送られてくる通知カードの受け取りは拒否してしまえば良いのでしょうか。また、ハローワークや年金事務所、税務署といった役所に提出する書類にはマイナンバーなど記入しなければ良いのでしょうか。

マイナンバーへの不安や不信感、同制度への数々の疑問点を踏まえた上で、それでも当ブログとしては「通知カードは素直に受け取ってください、役所に提出する書類にはマイナンバーを記入してください」と表明させていただきます。

最初の一回や二回ぐらいなら、「従業員が番号確認をさせてくれませんでした」という理由で役所はマイナンバー未記入の書類をそのまま受け付けてくれることも有るかもしれません。しかし、それが本当にいつまでも続くでしょうか。

国や地方公共団体には、マイナンバー法で「基本理念にのっとり、個人番号その他の特定個人情報の取り扱いの適正を確保するために必要な措置を講ずるとともに、個人番号および法人番号の利用を促進するための措置を実施する」責務が課せられています。

事業主に課せられたのは努力義務に過ぎないかもしれませんが、国や地方公共団体に課せられているのは法的義務です。一度や二度ならまだしも、マイナンバー未記入が何回も続くようだと、役所としてはそのまま黙って書類を受け付ける訳にはいかなくなると思われます。

役所の担当者は事業主に対し、きちんとマイナンバーを記入した上での書類提出を執拗に求めるようになるかもしれません。その一方で従業員が頑なにマイナンバーの提出を拒み続けると、事業主は役所と従業員との間で板挟みにあってしまいます。そのような事態は、誰にとっても望ましくありません。

総務担当者の受難

「マイナンバー制度は何のリスクも問題も無い、完全無欠の制度である」などと申し上げるつもりはございません。日本年金機構による個人情報流出事件などを経て、国や役所に対して不安や不信感を抱く思いも理解はできます。

しかし、社会保険労務士が書類作成や提出代行を業とできるよう国に認められた資格である以上、この資格を保持する者としては「国が決めたルールに従ってください」と言わざると得ません。法律や制度に対して納得がいかないにしても、そのための意思表明の手段として通知カードの受領拒否や書類への記入拒否といった手段を選択してしまうのは少々短絡的に過ぎるように思います。

10月5日以降、いよいよ通知カードが各世帯に向けて順次発送されます。その際、受け取りを拒否する世帯はどれだけ現れるのでしょうか。制度が立ち行かなくなるほど大量の受け取り拒否が、現実のものとなるのでしょうか。今後の推移を注視していきたいと思います。