個別労働関係紛争(個紛)を解決するには

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前回のエントリーでは、個別労働関係紛争(以下「個紛」)の定義、そして労基法違反の事例との違いについてご説明しました。今回は、職場でのいじめ・パワハラ、突然の解雇、給料の引き下げといった事態(すなわち個紛)になった際にどのように解決を図れば良いかについてご説明します。

前回、「個紛は労働基準監督署(以下「労基署」)の管轄外である」旨を書きましたが、それでは役所が一切介入できないかというとそうではありません。労基署の上位機関にあたる都道府県労働局には、助言・指導制度及びあっせん制度という個紛の解決手段が備えられています。

具体的にその内容を見ていきましょう。まず助言・指導制度とは、「都道府県労働局長が、紛争当事者に対し、その問題点を指摘し、解決の方向を示すことにより、紛争当事者の自主的な紛争解決を促進する制度」(厚生労働省 都道府県労働局作成のパンフレット『職場のトラブル解決 サポートします』より)の事をいいます。抽象的な書き方なので具体的なイメージが湧きにくいでしょうから、実際の流れを説明しましょう。都道府県労働局の総合労働相談コーナーで、総合労働相談員が相談者(ほとんどが労働者)からの申し出を受け付けた後、その相談員が相手方(雇い主、相談者の上司など)に電話をかけて、双方の言い分を踏まえたアドバイスを送る…といった感じになります。

そしてあっせん制度ですが、これは「紛争当事者間の調整を行い、話し合いを促進することにより、紛争を解決する制度」(同パンフレットより)です。これまた抽象的な書き方なのでもう少し具体的に説明すると、あっせん制度の利用を希望する人とその相手方との間に第三者(紛争調整委員会)が入り、双方の主張を踏まえた上での解決策(あっせん案)を提示して紛争の解決を図る…という制度になります。

以上見てきたように、助言・指導制度、あっせん制度の双方とも「当事者間での話し合いによる解決を促す」ことに重きを置いています。そのため、制度を利用するためには「当事者間で話し合ってみたけどダメだった」という前提が必要ですし、強制力も弱く、相手方がそれに応じる義務も有りません。実際、厚生労働省のHPによれば、あっせん制度を申請してみたものの相手方の不参加により打ち切られてしまった割合は、全体の4割弱に上るそうです(平成25年度実績)。

それでも、比較的簡単な手続きで利用できること、解決までの日数が短く済むことを考えれば、個紛の解決手段としての意義は大いに有ると言えるのではないでしょうか?実際、宮城労働局の総合労働相談コーナーには、日々多くの方が個紛の相談にいらしています。裁判に訴えるほどではないけど、職場の悩みをなんとか解決したい…そう考える方々にとっては、少なからず助けになるに違いないと私は考えています。

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