マタハラ訴訟…最高裁の判断とは

 マタハラ訴訟に対する厚生労働省の反応

妊娠後の降格など「マタハラ」…厚生労働省が通達

妊娠や出産などを理由とした職場での嫌がらせ、マタニティー・ハラスメントマタハラ)を防止するため、厚生労働省は23日付で全国の労働局に通達を出し、企業への指導を厳格化するよう指示した。

通達は、女性が妊娠、出産したり、育休を取得したりしてから近い時期に企業が雇止めや降格などをすると、原則として男女雇用機会均等法などで禁止するマタハラにあたるとする内容だ。

これまでは、企業が女性に不利益な扱いをしても、マタハラにあたるかどうかの明確な判断基準がなく、抜け道になっていた。(YOMIURI ONLINE 2015年1月23日 20時52分配信)

昨年10月23日に最高裁にて判決の出た、いわゆる「マタハラ訴訟」を受けての厚労省の動きです。このマタハラ訴訟の最高裁判決は、TVや新聞などの各種マスメディアでも大きく取り上げられ、「マタハラ」という言葉がこの年の「ユーキャン 新語・流行語大賞」の候補にノミネートされるほどの注目を浴びました。 続きを読む

元作業員からの訴え…国はがんの発症に責任を負うか

福島第一原発元作業員からの訴え

社会保険労務士としてではなく、被災地に住む一人の人間として、見逃せないニュースを見つけました。2015年1月18日付、中日新聞朝刊の記事です。

胃と膀胱を全摘 「労災認めて」と訴え

(前略)

事故発生当初、福島第1で4カ月間作業し、その後、胃や大腸など3カ所でがんが見つかった札幌市の男性(56)は、被ばくが原因だとして労災と認めるよう訴えている

(中略)

12年春に血尿が出たため診察を受けると、膀胱(ぼうこう)がん。その1年後、東電の負担でがん検診を受けたら、大腸と胃にがんが見つかった。東電や厚生労働省の窓口に相談したが、「因果関係がわからない」とたらい回しにされたという。

転移でなく3カ所もがんが見つかったのは、被ばくが原因として、男性は13年8月に労災を申請。一方で胃と膀胱を全部摘出し、大腸がんも切除。重度障害者の認定を受けた。

男性は「国や東電は検査を受けろと言うが、労災が認められなければ治療は自費。命懸けで作業をしたのに使い捨てだ。働きたくても働けない。個人では因果関係を立証できない。国は調査するなら徹底的にしてほしい」と語った。

(後略)

福島第一原発において、がれきの撤去作業にあたっていた元作業員の男性(以下、「元作業員」)からの訴えです。原発事故の発生以来、放射線量の急激な増加により、福島第一原発敷地内と周辺地域でがんの発生率が上昇すると懸念されていた事は、皆さんもご存じのことでしょう。ついにその心配が現実のものになってしまったか、という不安を感じさせるニュースです。 続きを読む

残業代ゼロ法案に新たな動き…厚労省の提示した制度とは

残業代ゼロ法案の新たな動き

このブログでも何回か取り上げてきた、いわゆる「残業代ゼロ法案」。つい先日、厚生労働省で新たな動きが有ったようです。

厚生労働省には、諮問機関(厚生労働省に対して意見を述べる機関。学識経験者等で構成され、その意見に拘束力は有りません)として「労働政策審議会」が設置されています。この労働政策審議会は、扱うテーマによって、更に「労働条件分科会」「安全衛生分科会」等に分かれます。

その中の一つである「労働条件分科会」が1月16日に厚生労働省で開催され、その中で残業代ゼロ法案の具体的な中身が提案されました。

その内容は、「今後の労働時間法制の在り方について(報告書骨子案)」と書かれた、こちらから読む事が出来ます。 続きを読む

いっしょに検証!年金マンガ

厚生労働省の年金マンガとは

今朝のyahoo!ニュースに、こんな記事が有りました。

年金の「世代間格差」、本当にないのか 厚労省年金マンガに「色々ひどい」と反発

厚生労働省がホームページ上で公開している公的年金の制度や現状を解説するマンガが「色々ひどい」とツッコミを浴びている。

公的年金がなくなることはありません」「若者が損とは言えません」。厚労省としては仕方がない説明なのだろうが、若い世代を中心とした読者を納得させることはできず、反発を招いてしまった

(中略)

マンガは「いっしょに検証!公的年金」というタイトルで、全11話86ページが2014年5月14日に公開された。両親と10~30代の兄妹の家族が、年金にまつわる疑問や不安を口にすると、制度に詳しい「年金子(とし・かねこ)」が「ご安心くださーい」といって解説する内容だ。

公開直後もマンガについて書き込む人がいなかった訳ではないが、15年1月中旬ごろに、一部ツイッターユーザーに発掘されたらしく、まとめサイトに取り上げられ、ネットで注目を浴びた

(後略)

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労働条件通知書に潜むワナ

書面による労働条件の明示義務

労働基準法第15条で使用者に義務付けられている、「労働条件の明示」。

同条文では、労働契約の締結にあたり、労働者に対して労働条件を明示しなければならない事、始業就業の時間や賃金計算方法といった特に重要な事項は書面によって明示しなければならない事、などが定められています。

建設業や運輸業と言った一部の業種では、未だに口約束によって労働契約が締結されるケースが多く、それによって引き起こされる労使トラブルが後を絶ちません。しかし労働の現場を全体的に見れば、「人を雇い入れたときには労働条件を書面で明示しなければならない」という意識はだいぶ浸透してきたように思います。 続きを読む

生活残業、会社と従業員との認識のズレ

会社を悩ませる「生活残業」

労働基準法なんか守っていたら、ウチの会社はつぶれてしまう

多くの中小企業経営者から聞かれる言葉です。

この言葉には様々な思いが込められていると思います。人手が足りない、会社の経営が苦しい、景気の先行きが不安だ…等々。そしてその中には、こんな考えも有るのではないでしょうか。

残業に対していちいち馬鹿正直に割増賃金を払っていたら、それを目当てにダラダラと会社に残り続ける従業員が続出する

いわゆる「生活残業」という代物です。従業員からすれば、同じ仕事をするにしても、短い時間で済ませるより長い時間をかけた方がより多くの賃金をもらえるのならば、誰もがそうしようと考えるのはごく自然なことと言えるでしょう。 続きを読む