未払い残業代請求のポイント①…就業時間の記録

残業したのに、残業代を払ってもらえない」…労働相談の現場で、多くの相談者から寄せられるお悩みです。書店に行けば、労使それぞれの立場から書かれた「未払い残業代」の書籍が棚に並べられているのを見かけますし、ネット上では「残業代請求」を売りにした弁護士事務所のバナー広告を多く見かけるようになってきています。

一昔前なら、「仕事なんだから少しぐらいのサービス残業は当たり前!」というコンセンサスが労使双方にできていたのかもしれません。しかし、「男は仕事、女は家庭」といった価値観が過去のものとなり、労働者の権利意識が高まりつつある昨今では、もはやそのような考え方は通用しなくなってきています。経営者が「ウチは中小企業なんだから残業代なんかいちいち払っていたら潰れてしまうよ」といって、法律を知らない労働者を誤魔化すことができなくなりつつあるのです。 続きを読む

有給休暇の相談…労基署からのアドバイスとは

ウチの職場では年次有給休暇を使わせてもらえない」「上司に相談したら、『パートには有給休暇が無い』と言われた」…このような悩みをお持ちの方は多くいらっしゃることでしょう。実際の労働相談の現場でも、ほぼ毎日と言っても良いくらい頻繁に寄せられる相談です。

以前のエントリーでも取り上げたように、年次有給休暇は、労働基準法第39条で認められた労働者の権利です。有給休暇を消化するのに上司の許可などは原則として不要であり、労働者が「○月×日に有給休暇を使いたい」と申し出たら使用者はそれを認めなければなりません(ただし、業務の正常な運行を妨げる場合は使用者側に日にちを変更する権利が与えられています。これを時季変更権と言います)。 続きを読む

労働時間について、生じやすい誤解(後編)

前回に引き続き、今回のエントリーも労働時間に関する話題です。

労働基準法(以下「労基法」)では、労働時間の上限を日単位(8時間)及び週単位(40時間もしくは44時間)でしか定めておらず、月単位で見たときに総労働時間が160時間~184時間と変動してもそれは違法とならない、というのが前回のお話でした。

しかしながら、特に職場で総務関連のお仕事をされている皆様の中には、「1ヶ月の労働時間の上限は171時間とか、177時間じゃないの?」と考えていらっしゃる方もおられます。なぜそうなるのでしょうか? 続きを読む

労働時間について、生じやすい誤解(前編)

この間、私が受け付けた労働相談で「あれっ?」と思う出来事がありました。労働時間に関する内容です。

皆さんは、労働基準法(以下「労基法」)で定められた労働時間の限度をご存知でしょうか?これはお分かりの方も多いでしょう。そう、「1日8時間、1週40時間(従業員10人未満の飲食店や小売店等には、週44時間まで働かせられる特例有り。労基法施行規則25条の2)」ですね。間違えやすいのが、「週休二日制」に対する考え方。これは法律用語ではなく、単にマスメディアが広めた俗語に過ぎません。法律上は、「1週に1日、もしくは4週に4日以上」の休みを与えさえすれば良く、「週に2日休ませなさい」と定められてはいないのです。 続きを読む

「過労死等防止対策推進法」とは

今年の通常国会において成立し、6月27日に公布された「過労死等防止対策推進法」。同年11月1日が施行日と定められたのに伴い、厚生労働省で「過重労働解消キャンペーン」を実施中であることは、昨日のニュースで取り上げた通りです。

この「過労死等防止対策推進法」ですが、具体的にはどういう内容の法律なのでしょうか?「過労死」「防止」「対策」といった言葉が名前に含まれているのですから、残業を月に100時間させた雇い主には罰則を適用するだとか、労働者を過労死させた雇い主に対して巨額の賠償金を義務付ける法律ができたかのようにも思えます。今回のエントリーでは、その辺りを取り上げてみましょう。 続きを読む

労使トラブル…自己都合?それとも会社都合?

労働者(以下「労」)「○月×日に休みたいので、年次有給休暇を使わせてください」

使用者(以下「使」)「ウチの会社には年休なんか無いよ。それにすごく忙しい時期じゃないか、休みなんてあげられる訳無いだろう」

労「でも僕は勤続○年だから、年休が使えるはずですよ。法律上認められた権利なのに、ウチの会社は使えないなんておかしくありませんか」 続きを読む

未払い残業代を払わせたい…申告・訴訟・労働審判

長年のサービス残業に耐えて働いてきたけど、もう我慢の限界。仕事を辞める決心が付いた。どうせ辞めるんだから、今までの未払い残業代もついでに請求してやれ…そう考える方は多くいらっしゃいます。しかし使用者に対して未払い残業代を払うように求めたところで、『ウチにはお金が無い』『残業の記録が残って無いから払う理由が無い』『○○手当に残業代を含めており、全部支払済みだ』と、剣もほろろに突き返されてしまうケースがほとんどと言って良いでしょう。

使用者からこのように切り返された場合、労働者一人の力でそれを更に覆すのは非常に困難です。まず不可能と言えるでしょう。それでは泣き寝入りするしか無いのでしょうか? 続きを読む

辞職の意思表示…どうしても辞めたい時には

前回のエントリーでは、社長や店長といった人達(使用者)からの許可を得なくても仕事は辞められること、労働者からの一方的な退職通告(辞職の意思表示)はおおむね2週間後に有効となることを説明しました。

今回は、実際に辞職する際のノウハウについて書いてみたいと思います。

まず最初に、これだけは絶対にしてほしくない方法。それは、使用者に一言も『辞める』という意思表示をしないまま、ある日突然職場に出勤しなくなってしまう事、いわゆる「バックレ」です!これは本当に周りの人が迷惑します。何も意思表示をしないままで出勤してこないと、使用者としては無断欠勤なのか、それとも退職してしまったのかの判断が非常に困難です。 続きを読む

労働者の「辞めさせてもらえない」は間違い

労働基準監督署や労働組合、NPO法人などに寄せられる労働相談の中身を見てみると、「今の仕事を辞めたいのに辞めさせてもらえない」「上司に『辞めたい』と言ったら『辞めるなら損害賠償請求するぞ』と脅された」という内容が目に付きます。

意欲を持って現在の仕事に就いたものの、何らかの理由で辞める必要が生じた、という事は誰でも普通に起きうることでしょう。しかしそれに対して、雇い主側からしてみれば『せっかく雇ってやったのに冗談じゃない』と感じるのも無理からぬことです。

こういったトラブルを解決する際の物差しとして機能するのが法律の役割です。それでは、法律上はどのように定められているのでしょうか? 続きを読む

個別労働関係紛争(個紛)を解決するには

前回のエントリーでは、個別労働関係紛争(以下「個紛」)の定義、そして労基法違反の事例との違いについてご説明しました。今回は、職場でのいじめ・パワハラ、突然の解雇、給料の引き下げといった事態(すなわち個紛)になった際にどのように解決を図れば良いかについてご説明します。

前回、「個紛は労働基準監督署(以下「労基署」)の管轄外である」旨を書きましたが、それでは役所が一切介入できないかというとそうではありません。労基署の上位機関にあたる都道府県労働局には、助言・指導制度及びあっせん制度という個紛の解決手段が備えられています。 続きを読む