平成25年度 個別労働紛争解決制度施行状況

厚労省より、個紛解決制度に関する発表

今月30日、厚生労働省は、「平成25年度個別労働紛争解決制度施行状況」をHP上で公開しました。私が労基署で基準相談員を務めていた時期の統計であり、非常に興味深いデータです。

私が担当していた基準相談員の仕事と言うのは、賃金不払いやサービス残業に関する相談を受け付け、労働基準監督官の調査を希望する相談者については法違反の申告書を作成するという仕事でした。

個別労働紛争に関する相談を受け付ける相談員としては、労働局所属の「労働総合相談員」という職務の先生方が別におられ、基準相談員が電話や窓口で受け付けた相談の内容が個別労働紛争に該当する場合は、総合相談員に引き継ぐのが原則です。 続きを読む

残業代ゼロ法案についての考察 その1

残業代ゼロ法案はどのようにして生まれたか

社労士の端くれとして無関心ではいられない、いわゆる「残業代ゼロ法案」。今日のエントリーでもこの問題を取り上げたいと思います。

そもそもこの「残業代ゼロ法案」、どのような場で、どのような人達が、どういう考えの下で提案したものなのでしょうか?まずはその部分から考察していきたいと思います。

今年4月22日、首相官邸4階の大会議室で「経済財政諮問会議・産業競争力会議合同会議(第4回)」が開かれました。こちらの「議事次第」を読むと、話し合われたのは(1)戦略的課題(労働力と働き方)と(2)歳出分野の重点化・効率化(社会保障)の2点。その内(1)において民間議員から提案されたのが「残業代ゼロ法案」だったようです。 続きを読む

長時間労働を招く?残業代ゼロ法案

残業代ゼロ法案の内容と様々な反応

昨今のマスメディアを賑わせている、いわゆる「残業代ゼロ法案」。その法案の内容には、以下のような特徴が有ると報道されています。

  • 労働時間の長さではなく、成果に対して賃金を支払う制度
  • 労働時間の総枠に制限を設けるタイプと、制限を設けないタイプの二種類に分かれる
  • 年収1,000万円以上の専門職は、労働時間の総枠に制限を設けないタイプの対象
  • 制度の対象となる労働者が、自らの希望によってタイプを選べる

これらの特徴の内、「年収1,000万円以上」という要件については、『対象者は幹部候補に限定した上で、年収要件は設けない方向に修正する』と報じるマスメディアも有るようです。 続きを読む

時間外労働に関し、事業者が労働者にとるべき措置

厚生労働省が事業者に求める措置とは

今回も長時間労働の問題に関して取り上げます。

特別条項付きの36協定を締結すれば、限度基準を超過した法定時間外労働(以下「時間外労働」)を合法的に命じるられるようになることは前回ご紹介しました。「1年の半分を超えない」という制限にはかかるものの、特別条項付き36協定が締結された事業所においては月100時間超の時間外労働も理論上可能となります。この点について、若干の補足をしておきます。

前回のエントリーでも少し触れておきましたが、実のところ、国は必ずしも労働時間の延長を際限無く認めている訳ではありません。「過重労働による健康障害防止のための総合対策」(平成18年3月17日付 基発第0317008号)において、「事業者」(「使用者」とほぼ同義だが、それより若干狭い概念)に以下の措置をとるよう求めています。 続きを読む

長時間労働に悩む労働者の方へ…特別条項付き36協定とは

数多く寄せられる、長時間労働の相談

「毎日朝早くから夜遅くまで働かされ、休みもロクに取れない」

「1か月の勤務時間を自分で付けて集計してみたら、残業時間が100時間を超えた。こんな職場は異常ではないか」

私が労働基準監督署で相談員を務めていた頃、このような相談が数多く寄せられました。ちょうど私が学生だった頃から「過労死」という単語がマスメディアで取り上げられるようになり、世界的に見ても異常な労働時間の長さが大きな社会問題となりました。あれから何年もの月日が経ち、少しは労働環境もマシになったかと思いきや、一向に状況は改善していないようです。 続きを読む

はじめましてのご挨拶、簡単に自己紹介を

本日よりブログを開設しました。このブログでは、労働相談に関する事やマスコミで取り上げられる労働関連のニュース等について書いていこうと考えております。もっとも、あまり堅苦しい事ばかりを書くつもりも有りませんので(そんなに偉そうなことを書けるようなタマでもないですし・・・)、折に触れてやわらかめの話題も取り上げていくつもりです。

今回は第1回目の投稿という事で、社会保険労務士事務所ONEの代表を務める私、中島文之について簡単にご紹介させていただきます。

私は平成23年に社会保険労務士試験に合格し、その翌年の平成24年8月に宮城社会保険労務士会に登録いたしました。当時は郵便局に勤務していたので、勤務社労士としての登録です。更にその翌年の平成25年3月、14年間に渡って勤務してきた日本郵便株式会社(採用当時は郵政省→日本郵政公社→郵便局株式会社→日本郵便株式会社)を退職し、労働基準監督署の相談員として新たな人生のスタートを切りました。同じ年の8月に社労士としての登録を「勤務」から「開業」へと変更し、同年9月~11月の紛争解決手続代理業務の研修を受けて試験も無事に合格。今年3月まで労働基準相談員としての仕事を1年間勤め上げた後、自らの事務所のホームページを立ち上げて現在に至っております。

上記の経歴をご覧いただいてお分かりのように、私は社労士の資格を有してはいるものの、実務経験という面では諸先輩方に比べて圧倒的に不足している人間です(勿論、社労士として最低限必要とされる法知識、また各種書類の記入・提出方法については心得ております)。そんな私が社労士として皆さまにご提供できるサービスとは何かと考えた時、「労働者の皆さんが抱えている数々の悩みや問題を解決するお手伝いがしたい」という思いが湧きあがってきたのです。

一般には、企業が労基署やハローワークに提出する各種書類について、その作成や提出を代行したり、経営者に対して人事・労務に関する法的なアドバイスをするのが社労士の仕事と考えられています。実際、私の先輩である社労士の先生方もそのようなお仕事をされて収入を得ておられる方がほとんどです。しかし私は、労基署の相談員として皆さまから寄せられる様々な相談に触れていく中で、労働の現場で多くの問題が生じていること、立場の弱さや法知識の不足などからたくさんの労働者が苦しんでいることを知りました。このような人々に対して何かお手伝いをさせてほしい、その思いから「労働問題の出張相談」という業務を思い立ったのです。

綺麗事では世の中は回りません。この仕事がいつまで続けられるかは未知数です。ですが、「心の底からやりたいと思える仕事ならば必ずやれるはずだ」という根拠の無い(?)確信が今の私を支えているのです。細々ではあっても、末長く、粘り強く続けていきたいと考えている次第です。今後も当事務所をよろしくお願いいたします。