業務改善助成金(特例コース)の受付再開と対象事業者の拡大につきまして

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業務改善助成金とは

 去る9月1日から、業務改善助成金(特例コース)の受付が再開されるとともに、申請の対象となる事業者の拡大が行われました。

 通常コースの業務改善助成金は、事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)を一定額以上引き上げ、且つ設備投資等を行った中小企業・小規模事業者等に対し、その費用の一部を助成する制度です。賃金の引き上げ幅や対象となる労働者の人数によって助成上限額が30万円~600万円と幅広く設定されている一方、助成対象となる経費はやや厳格に設定されていました。

特例コースと通常コースの違い

 一方で特例コースは、通常コースの支給要件に併せ、新型コロナウイルス感染症の影響により売上高 等が30%以上減少した中小企業事業者等を支援の対象とする制度となっております。

 このような制度の性質上、特例コースはより多くの事業者が利用できるよう配慮されています。具体的には、助成上限額が対象労働者の人数のみで区分されており、その人数が1人であれば30万円、2人~3人であれば50万円、4人~6人であれば70万円、7人以上で100万円とシンプルで分かりやすい区分けになっています。賃金の引上げ幅は一切関係無く、時給にして30円以上引き上げていればいくら賃上げしていようと助成上限額は変わりません。

 また助成対象となる経費も、通常コースであれば助成対象外となる広告宣伝費や汎用事務機器の購入費用も「業務改善計画に計上された関連する経費」と認められれば対象に加わりました。その他にも、PC、スマホ、タブレットの新規購入や、乗車定員11人以上又は車両本体価格200万円以下の自動車などの購入費用も機械設備の導入費として助成対象となっています。

 このように新型コロナウイルス感染症の影響により打撃を受けた事業者を支援する制度として利用されてきた業務改善助成金(特例コース)ですが、令和4年7月29日をもって新規受付を停止していました。これが、更に使い勝手が良くなるよう制度を見直したうえで、9月1日から受付を再開したという訳です。

特例コースの受付再開と対象拡大

 受付を再開した業務改善助成金(特例コース)では、助成対象事業者として新たに「原材料費の高騰など社会的・経済的環境変化等外的要因により利益率が前年同月に比べ5%ポイント以上低下した事業者」が加わりました。ここで言う「利益率」とは、令和3年4月から令和4年12月のうち、任意の1か月の総利益または営業利益の金額を売上高で除した率のことを指します。総利益を売上高で除したのが売上高総利益率、営業利益を売上高で除したのが売上高営業利益率です。

 また経費に対する助成率も引き上げられ、事業場内最低賃金が920円未満の場合は助成率が4/5、920円以上の場合は3/4となりました。従来は事業場内最低賃金の額にかかわらず一律3/4の助成率となっていましたから、最低賃金を低く設定している事業者にはより利用しやすくなったと言えます。

 更に、助成対象となる自動車の購入費用について、従来は「乗車定員11人以上」だったのが「乗車定員7人以上」へと拡充されました。これにより、マイクロバスや軽自動車、業務用のワゴン車といったこれまでの主な助成対象に加え、ミニバンやSUVなどの車種も視野に入ってくることとなります。とりわけ、ミニバンの購入費用が助成対象となることに対して魅力を感じられる事業主さまも多いのではないでしょうか。

※画像はイメージです。

申請に当たっての注意点

 このように対象を拡大したうえで受付を再開した業務改善助成金(特例コース)ですが、申請に当たっていくつかの注意点が有ります。

 まず一つ目が期限の問題です。助成金を申請するには事業場内最低賃金を30円以上引き上げる必要が有りますが、これは令和4年12月31日までに引き上げておかなければなりません。また助成金の申請期限は令和5年1月31日までとなっており、この日までに引き上げ後の賃金を対象労働者に支払っておく必要が有ります。更に言えば、この助成金も予算の範囲内で実施されることに変わりないため、予算が尽きたことにより申請期限を待たずに受付を終了することも有り得ます

 また今年10月から最低賃金が全国で30円~33円引き上げられるため、申請時点での事業場内最低賃金が地域別最低賃金を下回らないよう注意する必要が有ります。地域別最低賃金ぎりぎりで従業員を雇っているため、10月から時給を引き上げなければならない事業主さまの場合、それ以降にこの助成金を申請しようとするならば更に賃金を時給30円以上引き上げなければなりません。そうまでしてこの助成金を申請する必要が本当に有るのか、慎重な判断が求められます。

 逆に、事業場内最低賃金が地域別最低賃金を大きく上回る事業主さまはこの助成金を申請することができません。具体例を挙げると、今年10月以降における宮城県の最低賃金は883円となっていますが、事業場内最低賃金がこの地域別最低賃金を30円超上回る場合、例えば事業場内最低賃金1,000円で労働者を雇っている宮城県の事業主さまであれば助成金の支給対象外ということになります

 助成金の申請に当たってはその他にも注意点が有りますが、それを差し引いても今年度の助成金の中ではかなり利用しやすい方の部類であることには違いありません。厚生労働省のホームページにてこの助成金のパンフレットや申請マニュアルが公開されておりますので、ご興味をお持ちでしたら下記のリンク先をご参照ください。

 業務改善助成金特例コース (mhlw.go.jp)

今後を見据えて早めの取組を

 本稿の公開時点(令和4年9月22日)では最低賃金の改定まで2週間を切っているため、今年度の最低賃金改定に合わせた助成金の申請はまず不可能です。しかし政府は「全国の最低賃金を加重平均で1000円まで引き上げる」という目標を掲げており、今回の改定でも未だ目標には達していないことから、今後も最低賃金が引き上げられるものと予想されます

 今後の更なる賃金引き上げを見据え、また職場内での業務効率化を目指すためにも、業務改善助成金の利用を検討されてはいかがでしょうか。

 業務改善助成金は当事務所にて重点的に取り組んでいる助成金の一つですので、必ずや皆様のお役の立てるものと存じます。ご質問やご意見などお待ちしておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

 最後までお読みくださりありがとうございました。