働き方改革推進支援助成金の助成対象経費④~不支給となった事例~

このエントリーをはてなブックマークに追加

 今回の投稿では、前回とは逆に助成金の支給対象にならなかった事例を3つご紹介します。

 前回と同様、業務上の守秘義務やプライバシー保護の観点から、あえて表現を曖昧にしたり、事実関係を一部改変している箇所が有りますのでその点はご容赦ください。また挿入している写真は全てフリー素材を使用しており、実在の会社や人物とは一切関係有りません

①テレワーク用のノートパソコン

 令和4年度は「労働時間短縮・年休促進支援コース」を始めとする4コースが設定されている「働き方改革推進支援助成金」ですが、令和2年度まではこれらの4コースに加えて「テレワークコース」も設けられていました。

 このテレワークコースは、新たにテレワークを導入しようとする企業に対し、必要な経費の一部を国が助成金として支給する制度です。そして助成対象となり得る「テレワーク用通信機器」として、シンクライアント端末、VPN装置、シンクライアントサーバなどの購入費用が挙げられていました。

 この中でシンクライアント端末とは、オンラインでのみ使用できる、ごく限られた機能だけを備えた端末機のことを指します。見た目こそ一般的なノートパソコンと同じようなものも有りますが、オフラインで且つ汎用的な用途に使えるノートパソコンとは全く異なる性質の端末機なのです。

 例えテレワークに使用するものであっても、パソコン、タブレット端末、スマートフォンが助成対象外となる原則に変わりありません。この点の理解不足により、一般的なノートパソコンをテレワークに用いるという事業計画を作成してしまったことで、不支給となってしまった事案が有りました。

②ガレージ(建築物)

 以前の投稿でもご紹介したように、事業実施計画にて計上した経費が助成金の支給対象となるには、支給要領に定める「事業で認められる経費」のいずれかに該当していなければなりません。

 そして事業で認められる経費として、「機械装置等購入費」や「備品費」、「借損料」、「雑役務費」などが設定されています。このうち「機械装置等購入費」ですが、作業効率が上がるような機械や設備であればどのようなものでも認められるという訳ではありません。

 実は、申請マニュアルや支給要領には明記されていませんが、建築基準法上の建築物(土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの)の建築費用などは助成対象外なのです

 「敷地内にガレージを増築して作業効率を上げたい」とご希望の自動車修理業者さまから働き方改革推進支援助成金の事業実施計画を承ったことがありましたが、その計画は上記の理由により不交付(計画の時点でNG)となりました

③自社開発のソフトウェア

 これまでご説明してきた「労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新」や、「労務管理用ソフトウェアの導入・更新」といった事業を計画する際、それらの事業で導入するソフトウェアの購入費用は「備品費」として助成対象になり得ます

 そしてそのソフトウェアは必ずしも市販されているものだけに限定されるものではなく、助成金を申請する事業主のためだけにソフトウェア会社が開発した、特注のソフトも対象になる場合が有ります

 ただし、そのようなソフトウェアが助成対象となるためには、事業計画に記されている通りの機能をそのソフトウェアが備えていることを証明したり、販売価格が一般的な相場から大きく逸脱していないことなどを明らかにしたりする必要が有ります。そしてそれらを証明する資料として、その事業で導入するソフトウェアの説明書や仕様書、他の業者が同様のソフトウェアを販売する際の見積書などを労働局に提出するよう求められるのです。

 提出された資料の内容を検討した結果、同様の機能を備えた市販のソフトウェアに比べて著しく高額であったり、事業計画で記されているような機能を備えていない、もしくはそれ以外の機能を主とするようなソフトであると判断されれば、そのような事業計画には不交付(すなわちNG)の決定が下されます

④まとめと注意点

 以上、働き方改革推進支援助成金の経費が認められなかった事例をご紹介しました。あくまで私見ではありますが、支給対象になった経費と比べると、対象外となった経費の方は申請マニュアルや支給要領をきちんと読んでおけば或る程度察しが付くのではないかと思われます。

 ただし、今回ご紹介したガレージ(建築基準法上の建築物)の建築費用のように、申請マニュアル等を読んだだけでは想像しにくいものも中には有りますので、その点には注意が必要です。

 いずれにせよ、働き方改革推進支援助成金の申請を検討するのであれば、管轄労働局の担当部署に対して事前によく相談しておくことが肝心です

 昨年度から一部変更された点は有るものの、取り組みの難易度や支給決定までの所要期間、そして助成金の支給限度額等を総合的に考慮すれば、今年度も働き方改革推進支援助成金は魅力的な助成金の一つであると思われます

 この助成金を職場における働き方改革の推進にご活用いただければ幸いです。

 最後までお読みくださりありがとうございました。