働き方改革推進支援助成金の助成対象経費~OKな経費とNGな経費~

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 厚生労働者が実施している助成金の一つ「働き方改革推進支援助成金」では成果目標の達成に必要な経費が助成金の支給対象となること、最大490万円にもなる支給額を最大限に活用するためには「労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新」を実施できるかが鍵となることを前回までご説明してきました。

 今回の投稿では、今一つ具体的なイメージが湧きにくい「労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新」について、厚生労働省のHPで公開されている各種資料を引用しながら詳しくご説明していきます。

 厚生労働省が公開している『働き方改革推進支援助成金申請マニュアル(2022年度)』では、「労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新」を以下の通り定義しています。

労務管理用機器、労務管理用ソフトウェア、デジタル式運行記録計のいずれにも該当しない、労働者が直接行う業務負担を軽減する、または生産性向上により労働時間の縮減に資する設備・機器等の導入・更新。

 そしてその具体例として以下のようなものを紹介しています。

業種設備・機器等効果
小売業POS装置在庫管理の負担軽減
飲食店自動食器洗い乾燥機食器洗い作業の負担軽減
製造業携帯型成分分析計作業場と事業所間の移動時間削減
倉庫業入出荷システム入出荷と在庫管理の連動による効率化
学習塾業務システム生徒の成績管理等の業務効率化
設計業3DCAD専用機作図に要する時間の縮減

 このように具体例が挙げられている業種については、助成対象となる経費のイメージをある程度掴むことができそうです。一方で、この具体例に挙がっていない業種の場合、この記述だけで助成金の支給対象になる経費を具体的にイメージすることはほぼ不可能と言えるでしょう。

 そこで、今度は厚生労働省が公開している『働き方改革推進支援助成金支給要領』という文書から紐解いていくことにします。この『支給要領』は働き方改革推進支援助成金の申請に関する細かいルールを定めた文書となっており、助成金の支給対象となる経費についてもより具体的に説明されています。

 『支給要領』の2ページでは、助成金の支給対象となる経費の範囲を以下の通り定めています。

助成対象経費の範囲は、改善事業を実施するために、交付決定日から支給申請日までに実際に支出したものであり、かつ、対象事業場が成果目標を達成するために必要な経費について、別紙の範囲で認めることとする。

 別紙の内容は以下の通りです。なお、労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新に関する部分のみ抜粋しています

経費区分具体的な内容
借損料機器・設備類、ソフトウェア等のレンタル、リース等の費用、ICTサービスの利用料
雑役務費機器・設備類、ソフトウェア等の保守費用
備品費ICカード、自動車等(乗用自動車等を除く)の購入費用、ソフトウェア等の購入・改良等の費用
機械装置等購入費機器・設備類の購入、改良等の費用、機器・設備類の変更、撤去等の費用

このようにこのように、「労働能率の増進に資する」という名目であればどのような経費でも認められるという訳ではありません。『支給要領』別紙で挙げられているような、「機械装置等購入費」や「備品費」といった経費区分に該当する経費でなければ助成対象にはならないということになります。そのためこの助成金の利用に当たっては、導入しようとする機器や設備に係る経費が別表の区分に該当するか否かを慎重に見極める必要が有るのです。

 更に別表では、助成対象から除かれる経費として以下のようなものを挙げています(一部抜粋)。

  1. 乗用自動車等の購入費用
  2. パソコン、タブレット、スマートフォンの購入費用
  3. 単なる経費削減を目的としたもの
  4. 不快感の軽減や快適化を図ることを目的とした環境改善費用
  5. 通常の事業活動に伴う経費

 つまり、営業車として5ナンバーサイズの乗用車を購入したり、外回りの営業担当者に連絡用のスマートフォンを買い与えたりしても、それらの費用は助成対象にならないということです。

 その他にも、職場の温度調整のためだけに導入するエアコンであったり、電気代の削減のためだけに導入するLED照明、一般的な用途に使用するプリンター等を購入する費用も助成金の支給対象にはならないと考えられます。

 今回は、厚生労働省が公表している各種資料を引用しながら「労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新」として支給対象になる経費とならない経費についてご説明してきました。どのような経費であれば助成金を受給できるのか、大まかなイメージはできましたでしょうか。

 次回の投稿では、私が実際の業務で関わった事例の中から、助成金の支給対象になったものとならなかったものを可能な範囲でご紹介していく予定です。

 最後までお読みくださり、誠にありがとうございました。