職場でのパワハラ行為に対して懲戒処分ができますか?

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 先日、パワーハラスメント(いわゆるパワハラ)に関して或る事業主様からご相談を受けていた時の話です。その事業主様は、相談の途中でこんな事を仰いました。

 「どんな行為がパワハラに当たるのか、もっと具体的な判断基準は無いのですか?

 皆さまも既にご存じの通り、今年4月1日から中小企業にもパワハラ防止措置を講じる義務が課されることになりました。これにより、全ての事業主は「パワハラに関するトップメッセージの発信」「パワハラ相談窓口の設置」「パワハラ発生後の迅速かつ適切な対応」などといった各種取組を進めていかなければならないのです。

 冒頭のご質問は、パワハラ防止措置のうち「職場のパワハラに係る事後の迅速かつ適切な対応」について当方がご説明している最中に発せられました。

 職場内でパワハラが疑われる行為が発覚したため、当事者や第三者から事情聴取した結果、当該行為がパワハラに当たると判断されれば事業主は何らかの対応をしなければなりません。その対応には人員配置の見直しなど色々なやり方が考えられますが、場合によっては当該パワハラ行為者に対して懲戒処分を下すことも考えられます。

 しかし、ここで一つの問題が生じます。

 そもそも、その行為がパワーハラスメントに当たるか否かの判断は誰がするのでしょうか?管轄労働局が事業主のためにパワハラ行為を認定してくれたり、事業主が下した処分の後ろ盾になってくれたりするのでしょうか。

 実のところ、パワハラに関する事業主の判断に対して労働局がお墨付きをくれるような事は一切有りません。問題になった行為がパワハラに当たるのか、そうでないのかの判断は全て事業主の自己責任で行う事となるのです

 もちろん、パワハラに対して相談が寄せられれば労働局の担当者は懇切丁寧に答えてくれます。しかしそれはあくまでも情報提供であって、「これはパワハラに当たりますね」とか「これだけ悪質だと出勤停止ぐらいの処分をしても良いんじゃないですか」などといった具体的な判断を示すことは絶対に無いと言えるでしょう。

 そうするとどのような事態が生じるでしょうか。

 職場内でパワハラが疑われる行為が発覚した際に、当事者や第三者への事情聴取が不十分だったり、パワハラに対する認識や法的知識が誤っていたりすると、その行為者に対して不当な懲戒処分を下してしまう可能性が生じるのです

 昨今におけるSNSの普及などにより、労働問題に関して高いレベルの知識を持つ労働者が増えてきています。そのような人達は、事業主が懲戒処分を下したからと言って全てを甘んじて受け入れるとは限りません。自らに下された処分に納得がいかなければ、その無効を求めて訴えを起こすことだって有り得ます

 処分の是非をめぐって争った結果、万が一にも事業主側が負けるような事態になってしまえば、その後の対応は事業主にとって大きな負担になります。金額はさておいても損害賠償の支払は免れないでしょうし、処分対象者の処遇を巡って職場内はかなり混乱することでしょう。また誤った処分を下してしまったことで他の従業員からの求心力が低下してしまい、職場の秩序が大きく乱れることも予想されます。

 冒頭の事業主様からのご質問は、正にこのような事態を懸念してのものだったのでしょう。

 これを未然に防ぐためには、パワーハラスメントに対する正しい認識とその周辺の法律知識、そして実務上のノウハウが必要不可欠です。しかしながら、人事・総務部門に専門の従業員を配置できる程の大企業ならともかく、中~小規模の事業場ではなかなかそのような体制を整える訳にもいきません。

 私たち社会保険労務士は、正にそのような事業主さまをお助けするための専門家です。とりわけ当事務所は、パワハラに関する豊富な経験とノウハウを有しているため、皆さまからのご相談に対して適切な回答を差し上げられます。

 パワハラに関する外部相談窓口の委託や、現に発生しているパワハラ行為などについてご相談がありましたら、どうぞお気軽にお寄せください。

 皆さまからのお問い合わせを心よりお待ち申し上げます。