前回の投稿では、働き方改革推進支援助成金の事業実施計画における「労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新」として認められる経費と認められない経費について詳しくご説明しました。
今回はそれを踏まえ、私が実際に関与した数多くの助成金業務の中から、「こういう経費も助成対象になるのか」と皆さまが意外に思われるであろう事例を3点ご紹介いたします。
なお業務上の守秘義務やプライバシー保護の観点から、あえて表現を曖昧にしたり、事実関係を一部改変している箇所が有りますのでその点はご容赦ください。また挿入している写真は全てフリー素材を使用しており、実在の会社や人物とは一切関係有りません。
1.工事現場で使用する各種工具

一般住宅のリフォーム工事を請け負う会社さまのご依頼により、現場で使う各種工具を増台する事業実施計画を作成しました。
それまでも工事現場にて電動ドリルやインパクトレンチ、電動丸ノコといった工具を使用してきましたが、作業員を増やしたことで会社が保有している工具だけでは足りなくなり、作業効率の悪化のが悩みの種でした。
そこで働き方改革推進支援助成金を活用し、現場で使う各種工具を買い足す計画を立てました。これによって全ての作業員が工具を使用して作業に当たることができるようになり、作業効率が大幅に改善すると期待されます。
労働局の審査の結果、これらの工具は全て助成対象と認められ、計画通りに工具を買い足すことができました。
2.大型トラックやユニックなど貨物自動車

前回の投稿にて、「乗用自動車等の購入費用」は助成対象にならないことをご紹介しました。
しかしだからと言って、自動車購入費用の全てが助成対象外となるわけではないのです。支給要領にて助成対象外とされているのは、あくまで「乗用自動車等」(すなわち3ナンバー車や5ナンバー車)の購入費用に過ぎません。言い換えれば、普通貨物自動車(1ナンバー車)や特殊用途自動車(8ナンバー車)であれば事業実施計画の内容次第で助成対象と認められる余地が有るということです。
実際に私が関わった事案でも、「ユニックを自社で保有すれば他社からレンタルする手間が省けるので作業効率が上がるから、ユニックを購入したい」といった計画や「トラックの台数を増やすことで運送作業の効率が大幅に上がるから、追加で購入したい」といった計画が認められ、助成金を受け取ることができました。
なおこれらの車両は必ずしも新車で購入する必要はなく、中古車の購入であっても認められる場合が有ります。ただしその場合は業者から見積書を入手する際などに注意が必要です。
3.飲食店で使用する業務用冷蔵庫

「乗用自動車等の購入費用」と同じく、「通常の事業活動に伴う経費」も助成対象とならないのは前回の投稿でご説明した通りです。
この「通常の事業活動に伴う経費」には幅広い経費が該当することとなり、例えば飲食店であれば食材を保管する業務用冷蔵庫などがそれに当たります。
しかしこの業務用冷蔵庫も、全てが助成対象外になるとは限りません。事業を営むうえで最低限必要なサイズの冷蔵庫であれば「通常の事業活動に伴う経費」とみなされてしまいますが、より大きなサイズの冷蔵庫を導入することで作業効率が上がるのであれば助成対象と認められる場合が有るのです。
実際の事案でも、「現在使用しているものよりも大きいサイズの業務用冷蔵庫を導入することでより多くの食材を保管できるようになり、作業効率が上がる」という事業実施計画が労働局に認められ、助成金を受給できました。
4.まとめと注意点
以上、私が実際に関与した様々な事例の中から、意外な経費が助成金の支給対象となったものをご紹介しました。
これらを見てお分かりいただけたと思いますが、支給要領などで明確に支給対象外とされていない限り、実に幅広い経費が助成対象になり得ます。
もし現時点で作業効率を上げるために導入したいと考えている設備や機器が有れば、簡単に諦めたりせず、一度検討してみることをお勧めします。
ただし、今回ご紹介した事例はあくまでも過去の出来事です。
助成金の審査における判断基準は毎年微妙に変化しており、前年度助成対象となった経費だからといって今年度も助成対象となるとは限りません。また助成金の支給決定は都道府県労働局ごとに行いますので、ある労働局では助成対象となった経費が別の労働局では助成対象外と判断されるケースも十分に考えられます。
働き方改革推進支援助成金の事業実施計画を作成するに当たっては、予め管轄労働労働局に問い合わせておくことを強くお勧めします。またご希望のお客様には、当事務所もご相談に対応させていただきますのでお気軽にお問い合わせください。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。