個別労働紛争とは

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 個別労働紛争とは、人事労務管理の個別化や雇用形態の変化などによって近年増加している、労働関係についての個々の労働者と事業主との間の紛争のことを指します。(厚生労働省パンフレット『職場のトラブル解決サポートします』より)

 ここで注意していただきたいのが「紛争」という点です。

 職場では日々様々なトラブルが生じますが、その中でも代表的なものを挙げていくと

 ・労働契約の内容通りに働いたのに、給料が支払われなかった
 ・いわゆる36協定を締結せず法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えて働かされた
 ・18歳未満にもかかわらず深夜(午後10時~午前5時)に働かされた
 ・上司や同僚からパワハラやセクハラを受けている
 ・仕事で明らかな落ち度が有った訳でもないのに、解雇を通告された
 ・会社から一方的に、給料の大幅な減額を提示された

 などといった感じになろうかと思います。

 これらのトラブルのうち、給料の未払いや36協定未締結での時間外労働、そして未成年者の深夜労働といった問題は「労働基準法違反」となります。これらは労働関係法令によって課されている法的義務を事業主が違反している状態になりますので、「個々の労働者と事業主との間の紛争」には当たりません。これらの法違反は個別労働紛争としては扱わず、管轄労働基準監督署への「申告」などによって解決を図ることになります。

 一方で、職場におけるパワハラやセクハラであったり、一方的な解雇や給料減額(労働条件の引き下げ)といった問題は、労働基準監督署による取り締まりの対象にはなりません。なぜならこれらの問題は、労働基準法や労働安全衛生法といった強行法規の違反に当たらないからです。

 パワハラやセクハラについて事業主に課せられているのは、あくまで予防措置を講じる義務にすぎません。現在の法律は、パワハラなどの発生そのものを違法とする作りにはなってないのです。これは、改正労働施策総合推進法によるパワハラ防止措置の義務化が中小企業に課せられるようになった今年4月1日以降でも同じことです。

 また労働条件については、最低賃金や法定労働時間といった一定の規制こそかけられているものの、当事者同士の合意により自由な内容で締結することができるという建前になっています。法定労働時間を超える勤務時間が設定されているなど、労働基準法等の強行法規に抵触するような内容になっていない限り、当事者間で成立した労働契約に対して国が干渉することはできません。そして『当事者同士の合意により自由な内容で締結できる』項目には、「給料は月額(または日額、時給など)何円にするか」「労働契約が終了する条件」「労働契約の変更条件とその内容」といったものも含まれているのです。

 このように、労働基準法など強行法規の違反ではないものの、労働者と事業主との間でトラブルが生じている状態のことを「個別労働紛争」と言います。また、この強行法規の違反に当たらない労使間のトラブルのことを「民事上の問題(トラブル)」と表現することも有ります。

 個別労働紛争はこのような性格を持っておりますので、取り扱う範囲は多岐にわたります。厚生労働省のパンフレットで挙げられているだけでも、

 ・解雇、雇止め、(中略)賃金の不利益変更などの労働条件に関する紛争
 ・いじめ・嫌がらせなどの職場環境に関する紛争
 ・会社分割による労働契約の承継、(中略)労働契約に関する紛争
 ・募集・採用に関する紛争
といったものが紹介されています。この他、年次有給休暇に関するトラブル(年休取得を希望したのに事業主から拒絶されたなど)の解決に個別労働紛争の手段が用いられることも有ることから、職場に関するトラブルのほとんどがこれに該当すると言っても過言ではないかもしれません。

 当事務所は開業以来、専門家としての知見を存分に活かして、数々の個別労働紛争を解決してきました。以下にその一部をご紹介します。ただしプライバシー保護の観点から、ご紹介している事件の当事者を特定されることが無いよう一部改変しておりますので、その点はご容赦ください。