当事務所の解決事例

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 当事務所へご依頼いただいた個別労働紛争のあっせん代理事案のうち、代表的なものを3件ご紹介します。

 ただし、これらの事案に登場する人物や会社が特定されることが無いよう、一部改変してのご紹介となりますのでその点はご了承ください。

 また各記事の冒頭に掲載しているアイキャッチ画像は全てフリー素材であり、実在の人物や会社とは一切関係ありません

トラック運転手Aさんの事案

 大手運送会社にて長距離トラックの運転手として働くAさん(男性)からご依頼いただいた案件。

 Aさんの仕事は、大型トラックを運転して遠方の目的地まで貨物を送り届けることでした。運送の目的地が北東北(青森県など)や関東地方になることも多く、そのような時には1回の運送業務が3日間から4日間に及ぶことも珍しくありませんでした。

 運送業務が数日間にわたる場合であってもビジネスホテルなどに泊まるようなことは無く、休憩や休息は全て車内で行っていました。そのため睡眠時間も4~5時間程度しか取れず、睡眠が終わったら直ぐにトラックの運転を再開するといった具合に運送業務を行っていました。

 Aさんは毎月かなりの長時間にわたって残業をしていましたが、会社から毎月渡されていた給料明細には「基本給」と「歩合給」という項目が有るだけで、「残業代」という名目で払われているものは1円も有りませんでした。会社からは「歩合給の中に残業代も含まれている」と説明されていましたが、Aさんには会社から労働条件通知書が交付されておらず、また就業規則が職場のどこに保管されているのかも分からないため、それを確かめることはできませんでした。

 このような会社のやり方に対してどうしても納得のいかないAさんは、本件のご相談を当事務所にお寄せくださいました。その内容から、会社に対して未払い残業代を請求できる可能性があることを当事務所からお伝えすると、Aさんは是非残業代の支払を求めたいと希望されました。

 Aさんからご依頼を受け、当事務所は先ず管轄労働基準監督署に対し労働基準法違反の申告を試みました。これは、本件が労働基準法第36条や第37条の違反を含むと思われたからです。しかし管轄労基署の監督官からは、本件は当事者同士の労働条件の取り決めに関する問題だから個別労使紛争として解決を図るようにと指示されました。

 そこで、管轄労働局の雇用環境・均等室へのあっせん申請にて解決を図ることとしました。当事務所からはAさんの給料明細書や歩合計算表といった証拠書面を準備し、会社に対して粘り強くこちらの考えを主張しました。

 その結果、会社側が未払い残業代に相当する額の解決金を支払うことで本件は無事に決着することができました

トラック運転手Bさんの事案

 中小運送会社にてトラック運転手として働くBさん(男性)からご依頼いただいた案件。

 BさんもAさんと同様、県外への運送業務を多く担当していたことから、毎月長時間の残業を行っていました。

 毎月の給料支払日に併せて、会社からBさんに対し給料明細書が渡されていました。しかしその内訳が明らかでなく、また採用時に労働条件通知書が交付されていなかったことから、Bさんは会社から残業代がいくら払われているのか全く分かりませんでした。

 毎日朝早くから夜遅くまで働き、休みも週に1日程度しかもらえない中、残業代が十分に支払われていないと感じていたBさんは本件について当事務所にご相談くださいました。

 労働条件通知書が交付されていないことに加え、就業規則が職場のどこに保管されているかも分からないとのお話だったこと、そして給料明細書に記されている各項目の内容が不明であることから、会社に対して未払い残業代を請求できると当事務所は判断し、その旨をBさんにお伝えしました。するとBさんから、是非とも残業代の支払を求めたいとのご意向が示されました。

 Aさんの件と同じく、この件についても先ずは労働基準法違反を前提として、管轄の労基署に申告を行いました。すると、会社側から提示された証拠書面や、Bさんが保管していた書面の中に、給料明細書の内訳を示したものが見つかりました。その書面には、給料の支払項目として「みなし残業代」「残業代」などといった時間外割増賃金の支払を示唆する内容が記されていました

 これらの書面の内容から、労働基準法違反として扱うのは難しいと管轄労基署の監督官から告げられたため、県労働委員会へのあっせん申請にて解決を図ることとしました。

 前述したように、説明が不十分とは言え給料明細書に「残業代」などといった項目が含まれていることから、未払い残業代の支払を求める主張は困難なものになりました。しかし、労働条件通知書が交付されていないこと、職場における就業規則の周知が不十分であること、未払い残業代に関する就業規則の規定が不明瞭であることなどを粘り強く主張した結果、当初請求した未払い残業代の一部を会社がBさんに支払う形で労使双方が合意することとなりました

運行管理者Cさんの事案

 某旅行会社にて運行管理者として働くCさん(男性)からご依頼いただいた案件。

 他県に本社を構える旅行会社が宮城県内に営業所を新規開設するのに伴い、他社で運行管理者として働いていたCさんが引き抜かれることとなりました。

 ところが、他社から引き抜かれてきたというCさんの境遇が営業所長以下社員のやっかみの対象となってしまい。Cさんは就任当初から営業所内で誹謗中傷を浴びせられるようになりました。その内容はCさんのプライバシーに関するものの他、Cさんの過去を揶揄するようなものまで含まれており、職場全体でCさんに対するいじめや嫌がらせが行われていました

 Cさんは程なくして精神を病んでしまい、精神科医の診察を受けたところ「うつ病」と診断されました。これまでの経緯から、職場におけるいじめや嫌がらせがうつ病の原因だと信じて疑わないCさんは、会社に対してしかるべき対応を求めました。しかし会社側は、Cさんのうつ病は職場環境と一切関係無いと主張し一向に取り合おうとしません。

 会社側の不誠実な対応に業を煮やしたCさんは、本件について当事務所にご相談くださいました。ご相談の内容から、Cさんの職場にて上司や同僚から行われた一連の言動は「パワーハラスメント」に当たると思われたため、会社や上司、同僚に対して金銭的な補償を求めることができるとお伝えしました。Cさんからは、是非会社や上司に対して金銭補償を求めたいという強いご希望が示されました。

 本件は労働基準法など強行法規の違反が含まれる事案ではないため、当初から県労働委員会へのあっせん申請にて解決を図ることとしました。

 本件のようなパワハラ事案の場合、事実関係をどれだけ詳細に主張できるかが勝敗の分かれ目になるため、上司や同僚の言動に関するCさんへのヒアリングをかなり入念に行いました。心に深い傷を負ったCさんにとってこれらのヒアリングはかなりの負担になったと思われますが、我慢して最後までお付き合いくださいました。

 Cさんのご協力の結果、職場におけるいじめや嫌がらせが有った事実をあっせんの場でも認めてもらうことができました。県労働委員会から会社側に対して働きかけていただいた結果、会社がCさんに対して解決金を支払うことで本件は決着することとなりました