社会保険労務士と宮城県の事業所…関与の余地は

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宮城県における社会保険労務士の現状

突然ですが、宮城県社会保険労務士会には何人の社会保険労務士が登録しているかご存じでしょうか?

私の手元に在る『社労みやぎ』(宮城県社会保険労務士会員向け広報誌、年2回刊行)によれば、平成27年1月1日現在の登録数は個人会員が526名、法人会員が9名とのことです。個人会員526名の内146名が、何らかの企業に勤めている「勤務登録」となりますので、自ら事務所を構えている「開業登録」の会員は380名ということになります。

他士業を例に挙げると、宮城県の税理士は約950名で税理士法人は約40(東北税理士会ホームページより)であるようです。また、宮城県司法書士会のホームページで公開されている名簿によれば、個人の登録番号は700番台に達し、法人会員数は16に及びます。

司法書士の個人会員の中には廃業した方も何人かはいらっしゃるでしょうから、必ずしも登録数=実数とはならないでしょう。しかしそれでも、500~600人程度の司法書士が宮城県で活動していると推測されます。

これらの士業に比べると、宮城県の開業社会保険労務士の人数は決して多いと言えません。となれば、人数が少ない社会保険労務士は各企業から引く手あまた…と言いたいところなのですが、そうはなっていないのが現状です

正確な統計こそ出ていないものの、社会保険労務士の企業への関与率はおよそ3割程度と言われています。少々シビアな書き方になりますが、弁護士や税理士等の他士業と比べると、社会保険労務士への企業ニーズは低いということになるかもしれません。

しかし宮城県には数多くの事業所が存在しており、社会保険労務士への潜在的ニーズはまだまだ眠っているはずだと筆者は睨んでいます(多少の希望的観測を込めて)。今回のエントリーでは、その可能性を検証してみます。

宮城県統計年鑑2013より

宮城県のホームページで公開されている『平成25年版宮城県統計年鑑2013』を基に検証します。その内の『第4章 労働・賃金・事業所』によれば、宮城県の事業所数は以下のようになっています。

個人経営や株式会社、有限会社などを合算した、宮城県内の事業所総数は92,769にも及びます(平成24年2月1日現在)。その内訳を見ると、個人経営の事業所数が34,107で株式会社などの法人事業所数が51,299となります。

業種別にみると、一番多いのが「卸売業・小売業」で26,006。次に多いのが「宿泊業・飲食サービス業」の10,653で、「建設業」の10,188や「生活関連サービス業・娯楽業」の8,529などが以下に続きます。

その他、「不動産業・物品賃貸業」の6,734や「サービス業(他に分類されないもの)」の6,237、「医療・福祉」の6,056も他の業種に比べて高い数値と言えるでしょう。筆者個人としては、「製造業」が5,019にとどまったのが少々意外でした。経済のグローバル化を受け、生産コスト削減のために海外に拠点を移す企業が増えたということなのでしょうか。

次に、市区町村別の事業所数を見ていきます。事業所が一番多いのはやはり仙台市で、その数はなんと45,845にも及びます仙台市だけで、宮城県内の全事業所の半数近くを占めるというわけです。

しかも驚くべき事に、青葉区・泉区・宮城野区・若林区・太白区それぞれの事業所数は、他の市区町村のそれを全て上回っています。上記の中で事業所数が最も少ないのは太白区の5,873なのですが、仙台市以外の市区町村で最も事業所の多い大崎市の5,792を上回っているのです。

宮城県における経済活動が仙台市に一極集中してしまっている現状が、この統計からも伺えます。仙台市以外で事業所が多いのは、上記の大崎市の他、5,218の石巻市、4,203の登米市、3,376の柴田郡といったところです。筆者としては、「宮城第二の都市」と言えば石巻市を指す印象が有ったのですが、この統計を見る限りでは必ずしもそうではないようです。これも震災の影響なのでしょうか。

社会保険労務士が企業に関与できる余地は

以上見てきたように、宮城県、とりわけ仙台市には数多くの事業所が存在しています。もっとも「支店経済」といわれる仙台市においては、東京に本店を置く企業も少なくありません。そういった事業所に対しては、社会保険労務士が関与することは無いでしょう。しかしそれを差し引いても、社会保険労務士が企業に関与できる余地はまだまだ残されていると言えるのではないでしょうか。

社会保険労務士の専門領域は「各種書類の作成・提出代行」「人事・労務管理におけるアドバイス」「就業規則の作成・見直し」「給料計算」などです。違法行為や脱法行為に対するペナルティが大きい税金関連に比べると、それらの業務を専門家に外注するメリットは今一つ想像しづらいかもしれません。

しかし、労働者側の権利意識の高まりが指摘されている昨今、良くも悪くもルーズな従来の人事労務管理では企業経営が立ち行かなくなる恐れが有るのも事実です。特に最近ではパソコンやスマートフォンが普及したことで、「ウチの会社はブラック企業だ」という風評があっという間に全世界に広まってしまうリスクが有るのです。

企業経営者各位におかれましては、人事・労務管理における唯一の専門家である社会保険労務士に対し、更なるご理解をいただきたいと思います。また、我々社会保険労務士も、自らの専門業務について広く世間に周知する努力を続けていかなければならないと考えます。