労働時間について、生じやすい誤解(後編)

前回に引き続き、今回のエントリーも労働時間に関する話題です。

労働基準法(以下「労基法」)では、労働時間の上限を日単位(8時間)及び週単位(40時間もしくは44時間)でしか定めておらず、月単位で見たときに総労働時間が160時間~184時間と変動してもそれは違法とならない、というのが前回のお話でした。

しかしながら、特に職場で総務関連のお仕事をされている皆様の中には、「1ヶ月の労働時間の上限は171時間とか、177時間じゃないの?」と考えていらっしゃる方もおられます。なぜそうなるのでしょうか? 続きを読む

労働時間について、生じやすい誤解(前編)

この間、私が受け付けた労働相談で「あれっ?」と思う出来事がありました。労働時間に関する内容です。

皆さんは、労働基準法(以下「労基法」)で定められた労働時間の限度をご存知でしょうか?これはお分かりの方も多いでしょう。そう、「1日8時間、1週40時間(従業員10人未満の飲食店や小売店等には、週44時間まで働かせられる特例有り。労基法施行規則25条の2)」ですね。間違えやすいのが、「週休二日制」に対する考え方。これは法律用語ではなく、単にマスメディアが広めた俗語に過ぎません。法律上は、「1週に1日、もしくは4週に4日以上」の休みを与えさえすれば良く、「週に2日休ませなさい」と定められてはいないのです。 続きを読む

労使トラブル…自己都合?それとも会社都合?

労働者(以下「労」)「○月×日に休みたいので、年次有給休暇を使わせてください」

使用者(以下「使」)「ウチの会社には年休なんか無いよ。それにすごく忙しい時期じゃないか、休みなんてあげられる訳無いだろう」

労「でも僕は勤続○年だから、年休が使えるはずですよ。法律上認められた権利なのに、ウチの会社は使えないなんておかしくありませんか」 続きを読む

未払い残業代を払わせたい…申告・訴訟・労働審判

長年のサービス残業に耐えて働いてきたけど、もう我慢の限界。仕事を辞める決心が付いた。どうせ辞めるんだから、今までの未払い残業代もついでに請求してやれ…そう考える方は多くいらっしゃいます。しかし使用者に対して未払い残業代を払うように求めたところで、『ウチにはお金が無い』『残業の記録が残って無いから払う理由が無い』『○○手当に残業代を含めており、全部支払済みだ』と、剣もほろろに突き返されてしまうケースがほとんどと言って良いでしょう。

使用者からこのように切り返された場合、労働者一人の力でそれを更に覆すのは非常に困難です。まず不可能と言えるでしょう。それでは泣き寝入りするしか無いのでしょうか? 続きを読む

辞職の意思表示…どうしても辞めたい時には

前回のエントリーでは、社長や店長といった人達(使用者)からの許可を得なくても仕事は辞められること、労働者からの一方的な退職通告(辞職の意思表示)はおおむね2週間後に有効となることを説明しました。

今回は、実際に辞職する際のノウハウについて書いてみたいと思います。

まず最初に、これだけは絶対にしてほしくない方法。それは、使用者に一言も『辞める』という意思表示をしないまま、ある日突然職場に出勤しなくなってしまう事、いわゆる「バックレ」です!これは本当に周りの人が迷惑します。何も意思表示をしないままで出勤してこないと、使用者としては無断欠勤なのか、それとも退職してしまったのかの判断が非常に困難です。 続きを読む

労働者の「辞めさせてもらえない」は間違い

労働基準監督署や労働組合、NPO法人などに寄せられる労働相談の中身を見てみると、「今の仕事を辞めたいのに辞めさせてもらえない」「上司に『辞めたい』と言ったら『辞めるなら損害賠償請求するぞ』と脅された」という内容が目に付きます。

意欲を持って現在の仕事に就いたものの、何らかの理由で辞める必要が生じた、という事は誰でも普通に起きうることでしょう。しかしそれに対して、雇い主側からしてみれば『せっかく雇ってやったのに冗談じゃない』と感じるのも無理からぬことです。

こういったトラブルを解決する際の物差しとして機能するのが法律の役割です。それでは、法律上はどのように定められているのでしょうか? 続きを読む

個別労働関係紛争(個紛)を解決するには

前回のエントリーでは、個別労働関係紛争(以下「個紛」)の定義、そして労基法違反の事例との違いについてご説明しました。今回は、職場でのいじめ・パワハラ、突然の解雇、給料の引き下げといった事態(すなわち個紛)になった際にどのように解決を図れば良いかについてご説明します。

前回、「個紛は労働基準監督署(以下「労基署」)の管轄外である」旨を書きましたが、それでは役所が一切介入できないかというとそうではありません。労基署の上位機関にあたる都道府県労働局には、助言・指導制度及びあっせん制度という個紛の解決手段が備えられています。 続きを読む

個別労働関係紛争(個紛)について、より分かりやすく

以前にもこのブログで取り上げましたが、改めて個別労働関係紛争(以下「個紛」)について書きたいと思います。以前のエントリーは無駄に長文になってしまいましたので、今回はその反省を活かしてなるべくシンプル、簡潔に(笑)。

そもそも個紛とは何でしょうか?それは、職場でのいじめやパワハラ、突然の解雇、一方的な賃金の切り下げといった、労働者と使用者(雇い主)との間で生じる民事的なトラブルのことを指します。ここでわざわざ「民事的」と書いたのには理由が有ります。労使間のトラブルと言えば、他にも『毎月の給料が払われない』『サービス残業させられた』などといったものも有るのですが、それらの労働基準法(以下「労基法」)違反の事例と個紛とは区別して考える必要が有るのです。 続きを読む

年次有給休暇をとりたい方へ

有給休暇をめぐる現状

労働相談を受けていていると、皆さまから多く寄せられるのが『残業しているのに残業代を払ってもらえない』『仕事を辞めたいのに辞めさせてもらえない』そして『年次有給休暇(以下「有給休暇」)を使わせてもらえない』というご相談です。これらの問題は、(最近ではパワハラ・いじめも増えてきたものの)労働相談における三大テーマといっても過言ではないでしょう。

この三大テーマの中でも、皆さんからご相談をお寄せいただく度に「法律の内容を正しく広めなければ」と特に感じさせられるのが有給休暇の問題です。そこで、今回は『有給休暇を使わせてもらえない』という問題について取り上げてみたいと思います。 続きを読む

平成25年度 個別労働紛争解決制度施行状況

厚労省より、個紛解決制度に関する発表

今月30日、厚生労働省は、「平成25年度個別労働紛争解決制度施行状況」をHP上で公開しました。私が労基署で基準相談員を務めていた時期の統計であり、非常に興味深いデータです。

私が担当していた基準相談員の仕事と言うのは、賃金不払いやサービス残業に関する相談を受け付け、労働基準監督官の調査を希望する相談者については法違反の申告書を作成するという仕事でした。

個別労働紛争に関する相談を受け付ける相談員としては、労働局所属の「労働総合相談員」という職務の先生方が別におられ、基準相談員が電話や窓口で受け付けた相談の内容が個別労働紛争に該当する場合は、総合相談員に引き継ぐのが原則です。 続きを読む