前回の投稿に引き続き、令和4年度における「働き方改革推進支援助成金」の注意点をご紹介していきます。
既にご説明したように、「働き方改革推進支援助成金」では成果目標(「時間単位年休制度の新規導入」や「勤務間インターバル制度の新規導入・適用拡大」などコースによって異なる)の達成に向けた取組にかかる経費が助成金の支給対象となります。
この支給対象となる取組は、以下に挙げる7つのうち1つ以上を全ての対象事業場(成果目標の対象となる事業場)で実施することが必要とされています。
- 労務管理担当者に対する研修
- 労働者に対する研修、周知・啓発
- 外部専門家によるコンサルティング
- 就業規則・労使協定等の作成・変更
- 人材確保に向けた取組
- 労務管理用ソフトウェア、労務管理用機器等の導入・更新
- 労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新
これらの取組における経費の具体例として以下のようなものが挙げられます。
- 社労士など専門家に研修の講師を依頼し、謝金を支払った。
- 働き方の見直しについて専門家のコンサルティングを受け、謝金を支払った。
- 制度の新規導入に伴う就業規則の変更を社労士に依頼し、謝金を支払った。
- 幅広く人材を集めるため、有料の求人広告を利用した。
- 勤怠管理用のレコーダーとソフトウェアを購入した。
- 作業効率を上げるための設備や機器を購入した。
ただし、成果目標の達成に必要だからといって経費が無限に認められる訳ではありません。上記7つの取組のうち、①~⑤については助成対象となる経費に上限が設けられています。その内訳は以下の通りです。
労務管理担当者に対する研修 | 10万円 |
労働者に対する研修、周知・啓発 | 10万円 |
外部専門家によるコンサルティング | 10万円 |
就業規則及び諸規程、労使協定の作成・変更 | 10万円 |
36協定の変更 | 1万円 |
就業規則及び諸規程、労使協定の届出 | 1万円 |
人材確保に向けた取組 | 10万円 |
これは言い換えると、実際に生じた経費の額と助成対象として認められる経費の額は必ずしも一致しないということです。
例えば、時間単位年休制度の新規導入に伴う就業規則の全面改定を社労士に依頼し、その謝金として20万円を支払った場合を考えてみます。普通に考えれば経費が20万円で補助率が3/4なのですから、助成金の額は
20万円×3/4=15万円
となるように思われます。
しかし実際には、就業規則の変更に係る助成対象経費の上限が10万円なので
10万円×3/4=7万5千円
が助成金の支給額となるのです。
このことを知っておかないと、「就業規則変更の謝金20万円-助成金15万円で実質5万円の負担で済むと思ったのに、助成金が7万5千円しか払われなかったから12万5千円も負担する羽目になってしまった」というトラブルにもなりかねません。
働き方改革推進支援助成金の事業実施計画を作成する際は、この助成対象経費の上限額に十分ご注意なさってください。
なお先に挙げた7つの取組のうち、「労務管理用ソフトウェア、労務管理用機器等の導入・更新」と「労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新」については助成対象経費の上限が設けられていません。
働き方改革推進支援助成金はコースと成果目標次第で支給上限額が最大490万円にもなりますので、なるべく多く助成金を受給したいとご希望であれば、これら2つの取組の実施について検討することになろうかと思われます。
しかし「労働能率の増進に資する設備・機器」といった表現は抽象的過ぎて、具体的にどのような設備・機器を導入すれば助成金の支給対象となるのか、今一つイメージが湧かない方も多いことでしょう。
次回の投稿では、具体例を交えてその当たりを詳しくご説明する予定です。
最後までお読みくださり、誠にありがとうございました。