働き方改革推進支援助成金~団体推進コース~

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 今回は「団体推進コース」をご紹介します。

 これまで取り上げてきた3つのコースは、いずれも一つの中小企業事業主が申請の主体になっていました。団体推進コースはそれらと異なり、事業協同組合や商工会議所、一般社団法人といった事業主団体が主体となって実施する働き方改革の取組に対して助成金が支給される制度になっています。

 このコースの対象となる事業主団体は、事業協同組合や信用協同組合、商工会議所、商工会、そして一般社団法人や一般財団法人といった法律に規定する団体は勿論のこと、構成事業主が10以上で組織され、共同する全ての事業主の合意に基づく協定書が締結されている共同事業主も含まれます。

 ただしいずれの団体であっても、1年以上の活動実績が有ることが求められますのでその点はご注意ください。要は、この助成金を受給することだけを目的に慌てて事業主団体を結成しても助成金は支給されないということです。

 他のコースには見られない、このコースならではの魅力として以下の3点が挙げられます。

  1.  助成金の支給上限額が遥かに高額
  2.  取組に要した経費のほぼ全額が助成金として支給される
  3.  年度を跨げば何回でも申請できる

 先ず①の支給上限額ですが、これは原則として500万円となっています。更に、都道府県単位または複数の都道府県単位で構成される事業主団体の場合はこの上限額が1,000万円まで引き上げられます。これまでご紹介してきた3つのコースでは上限額が50万円~200万円に設定されていたことを考えると、かなり高額に設定されていると言えそうです。

 ただし、助成金の支給上限額が高額に設定されているということは、相応の規模の取組を実施することが事業主団体に求められているということにもなります。傘下の事業主のうち、ごく一部だけがその恩恵に与れるような計画では支給対象にはなりませんのでその点にはご注意ください。

※団体全体で活用できる取組を検討してください。

 次に②の助成金支給額ですが、他のコースと異なり、事業実施計画で計上された経費のほぼ全額(厳密に言えば合計額の1,000円未満は切り捨て)が助成金として支給されます。他のコースでは原則として経費の3/4、一定の要件を満たすと4/5が助成金の支給額であるため、申請事業主は経費の1/4又は1/5を自ら負担する必要が有りますが、団体推進コースではほぼ自己負担無しで働き方改革の取組を実施できるということになります。

 もっとも、働き方改革の取組に要するものであればどんな経費でも助成金の支給対象になる、というわけではありません。助成金の支給対象になる経費は申請マニュアルや支給要領に詳しく書かれていますので、それらを踏まえ慎重に計画を作成してください。

 最後に③の申請回数ですが、これは申請マニュアルや支給要領にて「(申請できるのは)、同一年度に1事業主団体1回に限る」という趣旨が記されています。裏を返せば、年度を跨ぐことで2回目、3回目の申請も可能になるということです。現にこのコースを複数年にわたって利用されている事業主団体も有りますので、興味がお有りでしたら積極的にチャレンジしてみるのも良いでしょう。

 気になる成果目標ですが、このコースでは「事業主団体等が事業実施計画で定める時間外労働の削減又は賃金引上げに向けた改善事業の取組を行い、構成事業主の2分の1以上に対して、その取組または取組結果を活用すること」となっています。

 こう書くとどのようなことをすれば良いのかイメージが湧きづらいかもしれませんが、具体的には、事業主団体のホームページや会報等を使って改善事業の取組内容を構成事業主の1/2以上に周知すれば成果目標を達成したと見なされます。これなら、多くの事業主団体で成果目標を達成できるのではないでしょうか。

 以上見てきたように、この団体推進コースは他の3コースには無い独自の魅力を持った制度になっています。ただし、複数の事業主が共同で取り組む計画でなければ支給対象にならないという、他のコースには無い複雑さも兼ね備えています。事業主団体が自ら申請できればそれに越したことは有りませんが、必要であれば我々社労士などの専門家を是非ご活用ください。

 以上で令和3年度における働き方改革推進支援助成金のコース紹介を終わります。

 最後までお読みくださりありがとうございました。