働き方改革推進支援助成金~労働時間適正管理推進コース~

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 今回は「労働時間適正管理推進コース」をご紹介します。

 このコースは、前回まで取り上げた2つのコースと異なり、令和3年度になって新しく設けられたコースです。申請マニュアルや交付要綱などといった文書では明言されていませんが、その成果目標から推測するに、改正民法の施行により未払い残業代の消滅時効が延長された(従来の2年から暫定的に3年へ延長)ことを踏まえての新設ではないかと思われます。

 その成果目標ですが、以下に掲げる3つの取組を全て実施することが求められています。

  1.  新たに勤怠(労働時間)管理と賃金計算等をリンクさせ、賃金台帳等を作成・管理・保存できるような統合管理IT システムを用いた労働時間管理方法を採用すること。
  2.  新たに賃金台帳等の労務管理書類(労働基準法第109 条に基づく記録の保存が義務づけられている書類のことをいう。)について5年間保存することを就業規則等に規定すること。
  3.  「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平成29 年1月20 日策定)に係る研修を労働者及び労務管理担当者に対して実施すること。

 この成果目標を眺めていると以下のような疑問が生じてきます。

  • どのようなシステムが『勤怠(労働時間)管理と賃金計算等をリンクさせ、賃金台帳等を作成・管理・保存できるような統合管理ITシステム』に該当するのか?
  • 労務管理書類の5年間保存について定める条文はどのような文言にすれば良いのか?
  • どのような内容の研修であれば『労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン』に係る研修を実施したと見なされるのか?

 これら3つの疑問点のうち、労務管理書類の5年間保存に係る条文については、申請マニュアルに規定例が掲載されています。よってその規定例を参考にすれば問題なく新たな条文を規定できることと思われます。

 しかし、統合管理ITシステムについては、該当する商品の名称などについて現時点では言及されていません。また研修の内容についても、研修の際に使用するレジュメや参考資料の具体例はいまだ公開されていません

『勤怠管理システムの新規導入!?何をどうすれば・・・』

 とりわけ統合管理ITシステムについては、「○○会社の××システムは助成金の支給対象となる」などと具体的に指定してしまうと公正さを欠くことにもなりかねないため、公正中立を建前とする厚生労働省としては、今後も具体的な商品名を挙げるような真似はできないのではないかと思われます。

 このコースの申請を検討するのであれば、導入を予定しているシステムや実施を予定している研修の内容が成果目標の達成に該当するのか、管轄の都道府県労働局雇用環境・均等部(室)にあらかじめ問い合わせ、慎重に確認しておくことが必須となるでしょう。

 なおこのコースの助成金支給額は、他のコースと同様、成果目標の達成に要した経費の3/4(一定の要件を満たせば4/5)となっています。支給上限額は50万円です

 申請マニュアル、交付要綱、そして支給要領といった公開されている文書を読む限り、この労働時間適正管理推進コースは、他のコース(特に労働時間短縮・年休促進支援コース)に比べて取り組みやすいとは言いにくい制度という印象を受けます。このコースを申請する状況としては、例えば前年度までに他のコースを全て申請し尽してしまったが、どうしてもまた働き方改革推進支援助成金を利用したい、といったケースが考えられるでしょうか。

 また、勤怠管理にITシステムを活用したいと考えておられる事業主様には検討する価値があると言えるでしょう。その点、皆さまのご希望や職場の事情に応じてご活用ください。

 次回は「団体推進コース」を取り上げます。

 最後までお読みくださりありがとうございました。