前回に引き続き、令和3年度における働き方改革推進支援助成金のコース内容をご紹介していきます。
第2回は「勤務間インターバル導入コース」です。
このコースの成果目標は、全ての対象事業場において休息時間が9時間以上11時間未満又は11時間以上の勤務間インターバルを導入することとなっています。
ここで言う「休息時間」とは、一日の勤務の終業時刻から次の勤務日の始業時刻までの時間を差します。例えば所定労働時間が9:00~18:00(休憩1時間)で週所定労働日数が月~金の5日と定められている職場であれば、月曜日の18:00に仕事を終えてから火曜日の9:00に仕事を開始するまでの時間が一つの休息時間ということになります。
この休息時間は所定労働時刻だけで決まるものではなく、遅刻・早退や残業などによる始業・終業時刻の変動によって変わります。例えば先ほどの例において、月曜日に1時間の残業をして終業時刻が19:00になった場合は、月曜日の19:00から火曜日の9:00までが休息時間ということになります。
勤務間インターバルとは、常に一定時間以上の休息時間を確保しようとする制度です。例えば11時間の勤務間インターバルを導入した場合なら、終業時刻から11時間以上経過しなければ次の勤務を開始できないということになります。仮に残業時間が長引き、11時間の休息を確保しようとすると翌日の始業時刻にまでずれ込んでしまうような事態になれば、翌日の始業・終業時刻をその分だけ後ろにずらすか、始業時刻のみ後ろにずらして本来の始業時刻との差分は働いたものと見なすか、いずれかの対応をしなければなりません。
こう書くと非常にハードルが高い目標であるかのように思われるかもしれませんが、実際のところはそこまで難しいものではありません。例えば先ほどの例で言えば、終業時刻が22:00(すなわち1日の残業が4時間)までであれば、11時間の休息を確保しつつ9:00に始業することが可能です。会社の業種や社員の担当業務にもよるでしょうが、最低でも9時間以上の休息時間を確保できれば良いと考えると、さほど難しい目標ではないのではないかと思います。
助成金の支給額は、労働時間短縮・年休促進支援コースと同様、成果目標の達成に要した経費の3/4(一定の条件を満たせば4/5)です。支給上限額は成果目標によって以下のように定められています。
①新規導入
9時間以上11時間未満・・・80万円
11時間以上・・・・・・・・100万円
②適用範囲の拡大又は時間延長
9時間以上11時間未満・・・40万円
11時間以上・・・・・・・・50万円
なお、上記「適用範囲の拡大」とは勤務間インターバルの対象労働者が半数以下の事業場において適用範囲を過半数まで拡大すること、「時間延長」とは9時間未満の勤務間インターバルを導入している事業場において休息時間を2時間以上延長して9時間以上とすることを指します。
また労働時間短縮・年休促進支援コースと同様、実際の職場における勤務間インターバルの運用状況を報告することまでは求められていません。成果目標に設定した制度を就業規則に規定し、事業実施期間内に施行することで達成となります。
このように比較的与しやすい制度であったため、令和元年度においてはこの助成金が大いに人気を集めました。その人気の高さは、予算超過による助成金の不支給が一時危ぶまれたほどです。
この反省を踏まえ、令和2年度からは「36協定の締結及び管轄労基署への届出」という要件が新たに加わりました。常に定時退勤ができるため実質的に勤務間インターバルが確保できていると言えるような事業主は助成金の対象から外し、残業を減らすための取り組みが真に必要な事業主のみを対象とすることで、より適切な予算消化を図るのが狙いと思われます。
更に令和3年度からは、「全ての対象事業場において、令和3年4月1日以前2年間において、月45時間を超える時間外労働の実態があること」という要件も新たに加わりました。これにより、現に勤務間インターバルを確保できていない事業主だけを助成金の支給対象にするという厚生労働省の方針がより明確になったと言えるでしょう。
次回は「労働時間適正管理推進コース」を取り上げます。
最後までお読みくださりありがとうございました。