働き方改革推進支援助成金で気を付けたい3つの注意点

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 前回までの投稿で、ここ1~2年間における助成金のトレンドの中心が「働き方改革推進支援助成金」であることと、働き方改革推進支援助成金がこれ程までに人気を集めている理由をご紹介してきました。

 しかし、人気の助成金だからといって何ら注意点が無い訳ではありません。今回は、働き方改革推進支援助成金を申請する際に気を付けていただきたい点を3つに絞ってご紹介していきます。

①申請件数の殺到による様々な弊害

 前回までご紹介してきたように、この助成金の申請件数は一昨年度辺りから急増してきています。この傾向は宮城労働局だけに留まらず、他の都道府県労働局でも同様です。そうなるとまず浮上してくるのが予算の問題です。

 働き方改革推進支援助成金も国の施策である以上、各年度における予算の範囲内で実施することが求められます。この予算の額は国の方針や過去の実績に基づいて設定されますが、助成金の申請件数や申請額が当初の想定を大きく上回ってしまうと、申請期限を待たずに予算が尽きてしまう場合が有るのです。

 実際に、令和元年度では予算不足に関する注意喚起が申請期限前に発せられましたし、令和2年度に至ってはほぼ全てのコースにおいて本来の期限を待たずに申請受付が打ち切られてしまいました

 また申請件数が多いということは、それだけ審査に時間がかかることも意味します。前回の投稿で、働き方改革推進支援助成金は支給決定までの期間が比較的短いとご紹介しましたが、申請が殺到してしまえば話は別です。

 とりわけ、申請件数が増えてくる夏から秋にかけて提出された申請に関しては、年度末ぎりぎり(すなわち年明けの2月~3月)までかかってようやく助成金を支給されたという事例も多く見られました。

 このように人気の高い助成金は、当然ながら多くの事業主様が申請を希望されます。そのため、早めに取組を始めないと、せ っかくの助成金を申請できなかったり、助成金が支給されるまでかなりの長期間待たされたりすることがあり得るのです

②経費が生じなければ助成金を申請できない

 前回の投稿でもご紹介しましたが、この助成金は成果目標の達成に要した経費の一部(原則3/4、一定の要件を満たせば4/5。上限あり。)を国が補填してくれる制度です。言い換えれば、成果目標を達成する際に経費が生じていなければ申請できないということになります。

 「成果目標を達成する際に経費が生じていない」状況とは、例えば大きな会社が自前で就業規則を変更して勤務間インターバル制度を新規導入し、社労士などの外部専門家に経費を支払わず成果目標を達成してしまうような場合が考えられます。

 他の助成金制度、例えば両立支援等助成金(出生時両立支援コース)のように経費が生じてなくても数十万円の助成金が支給されうる(ただし長期的に見れば受給した助成金の額以上に事業主は金銭的な負担を負うことになります。)制度と比べると、多少見劣りするように感じられる方もおられるかもしれません。

 ただ前回の投稿でご紹介したように、助成金の対象となる経費はかなり広い範囲で認められています。そのため、この助成金を活用するに当たり、何かしらの経費を生じさせるような事業計画を作るのはそれ程難しくないと思われます。裏を返せば、だからこそこれだけ申請が殺到しているとも言えるのです。

 助成対象となる経費については他の投稿でご案内しておりますので、ご興味がございましたらそちらも是非ご覧ください。

③パソコン、スマートフォン、乗用車は支給対象にならない

 幅広い経費が助成金の支給対象になり得るとご紹介しましたが、だからと言ってどんな経費でも助成対象になる訳ではありません

 具体的には、パソコン、スマートフォン、タブレット端末は原則として助成対象外です。一定の要件を満たせばパソコンなどが支給対象になる場合も有りますが、それはかなり特殊な事例です。テレワークを始めたいのでノートパソコンを買いたい、というだけではほぼ間違いなく助成対象とならないでしょう。

 また、一般的な乗用車(具体的には、3ナンバー又は5ナンバーが付与される乗用車)の購入費用も助成金の支給対象外です。前回の投稿にて自動車の購入費用が助成金の支給対象になり得る旨をご紹介しましたが、それは購入する自動車がトラックなどの貨物自動車もしくは特殊車両だからです。

 この助成金で支給対象になるのは、1ナンバー、4ナンバー、そして8ナンバーを付与される自動車の購入費用です。具体的には、乗車定員10人超のマイクロバスや商用バン、軽トラック、障碍者の送迎に用いる福祉車両などが助成対象になり得ます。


 以上、働き方改革推進支援助成金を申請する際の注意点を3つご紹介しました。どんな助成金にもメリットとデメリットは付き物ですので、それらを考慮しながら利用の可否をご検討いただければ幸いです。

 次回からは今年度における働き方改革推進支援助成金の各コースの概要をご紹介していく予定です。

 最後までお読みくださりありがとうございました。