年金マンガは女性蔑視!?大手マスメディアとネットとのズレ

またも問題視された年金マンガ

厚生労働省のホームページに掲載されている、公的年金制度のPRマンガ「いっしょに検証!公的年金」(以下「年金マンガ」)。この内容に対し、特に若い世代を中心として反発が強まっていることは、以前のエントリーでもご紹介しました。

主にtwitterを中心として、ネット上でこの話題が盛り上がっていたのが先月の半ばごろ。その後は徐々に沈静化していき、少なくとも私の知る範囲では、この話題に関する投稿を目にする事も無くなっていきました。ところが、ここにきて再びこのマンガへの批判が高まってきたようです

ネット上での「旬」はとっくに過ぎ去っているのに、何を今更?という疑問が湧くところではありますが、一体どういう経緯で年金マンガへの批判が高まってきたのか見ていくことにしましょう。 続きを読む

平成27年度の年金額改定率発表…その影響は

 平成27年度の年金改定率発表

先月30日、厚生労働省より「平成27年度の年金額改定について」という発表が有りました。この発表は、各種のマスメディアやブログ等でも既に取り上げられているため、どのような発表だったかご存じの方も多いかと思います。

実際にどんな内容だったかは、こちらをご覧になってください。

発表された内容をかいつまんで説明すると、要は平成27年度に支給される年金額の改定率が決まったという事です。平成26年度と比べて、0.9%引き上げられることになりました。具体的にどのように変わるかについては、以下のモデルケースで紹介されています。 続きを読む

マタハラ訴訟…最高裁の判断とは

 マタハラ訴訟に対する厚生労働省の反応

妊娠後の降格など「マタハラ」…厚生労働省が通達

妊娠や出産などを理由とした職場での嫌がらせ、マタニティー・ハラスメントマタハラ)を防止するため、厚生労働省は23日付で全国の労働局に通達を出し、企業への指導を厳格化するよう指示した。

通達は、女性が妊娠、出産したり、育休を取得したりしてから近い時期に企業が雇止めや降格などをすると、原則として男女雇用機会均等法などで禁止するマタハラにあたるとする内容だ。

これまでは、企業が女性に不利益な扱いをしても、マタハラにあたるかどうかの明確な判断基準がなく、抜け道になっていた。(YOMIURI ONLINE 2015年1月23日 20時52分配信)

昨年10月23日に最高裁にて判決の出た、いわゆる「マタハラ訴訟」を受けての厚労省の動きです。このマタハラ訴訟の最高裁判決は、TVや新聞などの各種マスメディアでも大きく取り上げられ、「マタハラ」という言葉がこの年の「ユーキャン 新語・流行語大賞」の候補にノミネートされるほどの注目を浴びました。 続きを読む

元作業員からの訴え…国はがんの発症に責任を負うか

福島第一原発元作業員からの訴え

社会保険労務士としてではなく、被災地に住む一人の人間として、見逃せないニュースを見つけました。2015年1月18日付、中日新聞朝刊の記事です。

胃と膀胱を全摘 「労災認めて」と訴え

(前略)

事故発生当初、福島第1で4カ月間作業し、その後、胃や大腸など3カ所でがんが見つかった札幌市の男性(56)は、被ばくが原因だとして労災と認めるよう訴えている

(中略)

12年春に血尿が出たため診察を受けると、膀胱(ぼうこう)がん。その1年後、東電の負担でがん検診を受けたら、大腸と胃にがんが見つかった。東電や厚生労働省の窓口に相談したが、「因果関係がわからない」とたらい回しにされたという。

転移でなく3カ所もがんが見つかったのは、被ばくが原因として、男性は13年8月に労災を申請。一方で胃と膀胱を全部摘出し、大腸がんも切除。重度障害者の認定を受けた。

男性は「国や東電は検査を受けろと言うが、労災が認められなければ治療は自費。命懸けで作業をしたのに使い捨てだ。働きたくても働けない。個人では因果関係を立証できない。国は調査するなら徹底的にしてほしい」と語った。

(後略)

福島第一原発において、がれきの撤去作業にあたっていた元作業員の男性(以下、「元作業員」)からの訴えです。原発事故の発生以来、放射線量の急激な増加により、福島第一原発敷地内と周辺地域でがんの発生率が上昇すると懸念されていた事は、皆さんもご存じのことでしょう。ついにその心配が現実のものになってしまったか、という不安を感じさせるニュースです。 続きを読む

残業代ゼロ法案に新たな動き…厚労省の提示した制度とは

残業代ゼロ法案の新たな動き

このブログでも何回か取り上げてきた、いわゆる「残業代ゼロ法案」。つい先日、厚生労働省で新たな動きが有ったようです。

厚生労働省には、諮問機関(厚生労働省に対して意見を述べる機関。学識経験者等で構成され、その意見に拘束力は有りません)として「労働政策審議会」が設置されています。この労働政策審議会は、扱うテーマによって、更に「労働条件分科会」「安全衛生分科会」等に分かれます。

その中の一つである「労働条件分科会」が1月16日に厚生労働省で開催され、その中で残業代ゼロ法案の具体的な中身が提案されました。

その内容は、「今後の労働時間法制の在り方について(報告書骨子案)」と書かれた、こちらから読む事が出来ます。 続きを読む

いっしょに検証!年金マンガ

厚生労働省の年金マンガとは

今朝のyahoo!ニュースに、こんな記事が有りました。

年金の「世代間格差」、本当にないのか 厚労省年金マンガに「色々ひどい」と反発

厚生労働省がホームページ上で公開している公的年金の制度や現状を解説するマンガが「色々ひどい」とツッコミを浴びている。

公的年金がなくなることはありません」「若者が損とは言えません」。厚労省としては仕方がない説明なのだろうが、若い世代を中心とした読者を納得させることはできず、反発を招いてしまった

(中略)

マンガは「いっしょに検証!公的年金」というタイトルで、全11話86ページが2014年5月14日に公開された。両親と10~30代の兄妹の家族が、年金にまつわる疑問や不安を口にすると、制度に詳しい「年金子(とし・かねこ)」が「ご安心くださーい」といって解説する内容だ。

公開直後もマンガについて書き込む人がいなかった訳ではないが、15年1月中旬ごろに、一部ツイッターユーザーに発掘されたらしく、まとめサイトに取り上げられ、ネットで注目を浴びた

(後略)

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パワハラ自殺訴訟…福井地裁のケース

・福井地裁の判決

今朝8時ごろに配信されたyahoo!ニュースの中に、こんな記事が有りました(一部抜粋)。

消火器販売などの「暁産業」(福井市)で勤務していた男性社員=当時(19)=が自殺したのは上司のパワーハラスメント(パワハラ)が原因として、男性の父親が損害賠償を求めた訴訟で、原告の主張を認めて会社と直属の上司に約7200万円の支払いを命じた福井地裁の判決について、原告側が15日までに名古屋高裁金沢支部に控訴した。控訴は12日付。

判決は、男性が手帳に書き残した上司の発言を「典型的なパワハラ」と認定し、会社と、この上司に損害賠償の支払いを命じた。管理職の上司への請求は「パワハラの実態を把握するのは困難だった」と退けた。

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日本航空パイロット及び客室乗務員の訴え

元パイロットと元客室乗務員が日航を提訴

今月3日と5日の両日、2010年大晦日に日本航空(以下「日航」)から解雇(以下「本件解雇」)された元パイロット及び元客室乗務員らが労働契約上の地位の確認(平たく言えば「解雇の無効」ということ)等を求めた訴えに対し、東京高等裁判所が判決を下しました。東京高裁はパイロットと客室乗務員の双方の解雇について地裁の判断を支持し、原告の訴えを退けたようです。

この裁判でどのような論点が争われ、原告と被告がどのような主張を繰り広げていったのか見ていきましょう。今回の高裁判決の元になった地裁判決では、以下の2点が争点となりました。(客室乗務員に対する地裁判決の全文はこちら続きを読む

残業代ゼロ法案と裁量労働制

民間議員の提案と厚生労働省の対案

今回も、いわゆる「残業代ゼロ法案」についてのエントリーです。

5月28日、官邸4階大会議室にて「産業競争力会議 課題別会合(第4回)」が開催され、その議題の一つとして「労働力と働き方」の問題が取り上げられました。こちらがその議事要旨になります。

「労働力と働き方」についての議論の冒頭、民間議員の主査から次のような発言が有りました。曰く、前回(4月22日)に開かれた経済財政諮問会議・産業競争力会議合同会議の場で民間議員が提案した「新しい労働時間制度」に対しては「メディアを始めとした世間の理解不足と提案の一部を誇張した報道」が有るのだとか。

理解不足や偏向報道が有ったかはともかく、この主査によれば、4月22日に提案した「新しい労働時間制度」について「充分に理解されていないと思われる点」が有るので説明するとのこと。そこで提出されたのがこちらの資料です。ポイントとなるのは以下の3点(経済再生担当大臣の記者会見より)。 続きを読む

残業代ゼロ法案についての考察 その2

民間議員より提出された2つの資料とは

前々回のエントリーで、いわゆる「残業代ゼロ法案」なる代物が、どのような会議の場でどのような人達から提案されたのかを確認しました。強い影響力こそ有るものの、実は「経済財政諮問会議」と「産業競争力会議」のどちらも政府の諮問機関に過ぎません。つまり、この会議における提言が必ずしもそのまま政策として採用される訳ではないのです

そもそもこの提言を実際に国政に取り入れようとするならば、現行労働基準法の改正もしくは新法の制定が必要になります。そうなると国会の議決が必要となりますので、各企業がすぐにでも「残業代ゼロ」制度を導入できるような状況では無いのです。現時点では、国民的な議論の俎上に上がったに過ぎないと言えるでしょう。 続きを読む