少々古い話で恐縮ですが、去る8月2日、令和4年度における地域別最低賃金額改定の目安が厚生労働省から発表されました。
令和4年度地域別最低賃金額改定の目安について (mhlw.go.jp)
わが国では労働契約の下で使用者が労働者を働かせる際、最低でも時給〇〇円以上の賃金を支払わなければならないと義務付ける最低賃金制度が用いられていますが、この最低賃金を何円に設定するかについて話し合う会議が中央最低賃金審議会です。
先日開催された中央最低賃金審議会では、各都道府県のランクごとに、AランクとBランクは31円、CランクとDランクは30円最低賃金を引き上げることを目安とする答申が取りまとめられました。
なおこのランク付けですが、各都道府県の経済実態に応じて全ての都道府県をA~Dの4ランクに分け、各ランクにおける引き上げ額の目安を提示しています。
Aランクは東京や神奈川などの6都府県、Bランクは京都や広島などの11府県、Cランクは北海道や福岡などの14道県、Dランクは宮城を除く東北5県を始めとする16県となっており、当事務所の所在地である宮城県はCランクに属しています。
厚生労働省によると、「今後は、各地方最低賃金審議会で、この答申を参考にしつつ、地域における賃金実態 調査や参考人の意見等も踏まえた調査審議の上、答申を行い、各都道府県労働局長が地域別最低賃金額を決定することとなります。」ということですが、これまでのところ、都道府県労働局長が中央最低賃金審議会と異なる決定を下したことはほとんど有りません。
毎年10月1日頃が最低賃金改定の施行日となりますので、今年の10月以降はこれまでよりも30円~31円以上引き上げられた最低賃金で労働契約を結ばなけれは違法ということになります。
ちなみに宮城県は令和3年度の最低賃金が時給853円ですから、これに30円を加えた時給883円以上で人を雇わなければならないということです。
昨今の人手不足を背景にパートやアルバイト募集時の時給を最低賃金よりも高めに設定している職場が宮城県でも多く見られますが、その一方で、介護業や飲食店、小売業など最低賃金ギリギリの条件で募集をかけざるを得ない業種が未だ多く存在するのも事実です。
そのような業種にとって、今回の最低賃金改定により人件費の負担が更に重くのしかかることは経営上の大きな打撃となるでしょう。
わが国は最低賃金を全国加重平均で1,000円とすることを目標に掲げており、今回の最低賃金引き上げでもその目標には達していません。
つまり、今年度時給が30円引き上げられるだけに留まらず、今後も最低賃金が引き上げられる傾向が続く可能性が高いということです。
よって企業を経営し人を雇い入れる皆さまにおかれましては、今後も引き上げられるであろう最低賃金以上の賃金を労働者に支払っても経営を成り立たせることができるような体制を構築することが必須となります。
厚生労働省は、そのような経営者の皆さまを後押しする助成金を複数ご用意しております。
その代表と言えるのが、業務改善助成金とキャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)です。
業務改善助成金は事業場内最低賃金を引き上げ、生産性向上に資する設備投資等を行う事業主に、キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)は有期雇用労働者(いわゆるパート・アルバイト)の基本給を2%以上昇給させた事業主にそれぞれ支給される制度です。
どちらも、最低賃金の引き上げに伴ってパートやアルバイトの給料を引き上げざるを得ない事業主にとっては使い勝手の良い助成金となっております。
ただし、どちらの助成金も管轄労働局に計画書を提出しておく必要が有るため、提出するタイミングによっては助成金の恩恵を受けられない場合も有りますのでその点は重々ご注意ください。
当事務所は助成金代行業務を事業の柱に据えており、業務改善助成金やキャリアアップ助成金の申請代行ももちろん承っております。
ご興味をお持ちでしたら、是非お気軽にお問い合わせください。