労使トラブル…自己都合?それとも会社都合?

労働者(以下「労」)「○月×日に休みたいので、年次有給休暇を使わせてください」

使用者(以下「使」)「ウチの会社には年休なんか無いよ。それにすごく忙しい時期じゃないか、休みなんてあげられる訳無いだろう」

労「でも僕は勤続○年だから、年休が使えるはずですよ。法律上認められた権利なのに、ウチの会社は使えないなんておかしくありませんか」 続きを読む

辞職の意思表示…どうしても辞めたい時には

前回のエントリーでは、社長や店長といった人達(使用者)からの許可を得なくても仕事は辞められること、労働者からの一方的な退職通告(辞職の意思表示)はおおむね2週間後に有効となることを説明しました。

今回は、実際に辞職する際のノウハウについて書いてみたいと思います。

まず最初に、これだけは絶対にしてほしくない方法。それは、使用者に一言も『辞める』という意思表示をしないまま、ある日突然職場に出勤しなくなってしまう事、いわゆる「バックレ」です!これは本当に周りの人が迷惑します。何も意思表示をしないままで出勤してこないと、使用者としては無断欠勤なのか、それとも退職してしまったのかの判断が非常に困難です。 続きを読む

労働者の「辞めさせてもらえない」は間違い

労働基準監督署や労働組合、NPO法人などに寄せられる労働相談の中身を見てみると、「今の仕事を辞めたいのに辞めさせてもらえない」「上司に『辞めたい』と言ったら『辞めるなら損害賠償請求するぞ』と脅された」という内容が目に付きます。

意欲を持って現在の仕事に就いたものの、何らかの理由で辞める必要が生じた、という事は誰でも普通に起きうることでしょう。しかしそれに対して、雇い主側からしてみれば『せっかく雇ってやったのに冗談じゃない』と感じるのも無理からぬことです。

こういったトラブルを解決する際の物差しとして機能するのが法律の役割です。それでは、法律上はどのように定められているのでしょうか? 続きを読む

個別労働関係紛争(個紛)を解決するには

前回のエントリーでは、個別労働関係紛争(以下「個紛」)の定義、そして労基法違反の事例との違いについてご説明しました。今回は、職場でのいじめ・パワハラ、突然の解雇、給料の引き下げといった事態(すなわち個紛)になった際にどのように解決を図れば良いかについてご説明します。

前回、「個紛は労働基準監督署(以下「労基署」)の管轄外である」旨を書きましたが、それでは役所が一切介入できないかというとそうではありません。労基署の上位機関にあたる都道府県労働局には、助言・指導制度及びあっせん制度という個紛の解決手段が備えられています。 続きを読む

個別労働関係紛争(個紛)について、より分かりやすく

以前にもこのブログで取り上げましたが、改めて個別労働関係紛争(以下「個紛」)について書きたいと思います。以前のエントリーは無駄に長文になってしまいましたので、今回はその反省を活かしてなるべくシンプル、簡潔に(笑)。

そもそも個紛とは何でしょうか?それは、職場でのいじめやパワハラ、突然の解雇、一方的な賃金の切り下げといった、労働者と使用者(雇い主)との間で生じる民事的なトラブルのことを指します。ここでわざわざ「民事的」と書いたのには理由が有ります。労使間のトラブルと言えば、他にも『毎月の給料が払われない』『サービス残業させられた』などといったものも有るのですが、それらの労働基準法(以下「労基法」)違反の事例と個紛とは区別して考える必要が有るのです。 続きを読む

日本航空パイロット及び客室乗務員の訴え

元パイロットと元客室乗務員が日航を提訴

今月3日と5日の両日、2010年大晦日に日本航空(以下「日航」)から解雇(以下「本件解雇」)された元パイロット及び元客室乗務員らが労働契約上の地位の確認(平たく言えば「解雇の無効」ということ)等を求めた訴えに対し、東京高等裁判所が判決を下しました。東京高裁はパイロットと客室乗務員の双方の解雇について地裁の判断を支持し、原告の訴えを退けたようです。

この裁判でどのような論点が争われ、原告と被告がどのような主張を繰り広げていったのか見ていきましょう。今回の高裁判決の元になった地裁判決では、以下の2点が争点となりました。(客室乗務員に対する地裁判決の全文はこちら続きを読む

残業代ゼロ法案と裁量労働制

民間議員の提案と厚生労働省の対案

今回も、いわゆる「残業代ゼロ法案」についてのエントリーです。

5月28日、官邸4階大会議室にて「産業競争力会議 課題別会合(第4回)」が開催され、その議題の一つとして「労働力と働き方」の問題が取り上げられました。こちらがその議事要旨になります。

「労働力と働き方」についての議論の冒頭、民間議員の主査から次のような発言が有りました。曰く、前回(4月22日)に開かれた経済財政諮問会議・産業競争力会議合同会議の場で民間議員が提案した「新しい労働時間制度」に対しては「メディアを始めとした世間の理解不足と提案の一部を誇張した報道」が有るのだとか。

理解不足や偏向報道が有ったかはともかく、この主査によれば、4月22日に提案した「新しい労働時間制度」について「充分に理解されていないと思われる点」が有るので説明するとのこと。そこで提出されたのがこちらの資料です。ポイントとなるのは以下の3点(経済再生担当大臣の記者会見より)。 続きを読む

残業代ゼロ法案についての考察 その2

民間議員より提出された2つの資料とは

前々回のエントリーで、いわゆる「残業代ゼロ法案」なる代物が、どのような会議の場でどのような人達から提案されたのかを確認しました。強い影響力こそ有るものの、実は「経済財政諮問会議」と「産業競争力会議」のどちらも政府の諮問機関に過ぎません。つまり、この会議における提言が必ずしもそのまま政策として採用される訳ではないのです

そもそもこの提言を実際に国政に取り入れようとするならば、現行労働基準法の改正もしくは新法の制定が必要になります。そうなると国会の議決が必要となりますので、各企業がすぐにでも「残業代ゼロ」制度を導入できるような状況では無いのです。現時点では、国民的な議論の俎上に上がったに過ぎないと言えるでしょう。 続きを読む

残業代ゼロ法案についての考察 その1

残業代ゼロ法案はどのようにして生まれたか

社労士の端くれとして無関心ではいられない、いわゆる「残業代ゼロ法案」。今日のエントリーでもこの問題を取り上げたいと思います。

そもそもこの「残業代ゼロ法案」、どのような場で、どのような人達が、どういう考えの下で提案したものなのでしょうか?まずはその部分から考察していきたいと思います。

今年4月22日、首相官邸4階の大会議室で「経済財政諮問会議・産業競争力会議合同会議(第4回)」が開かれました。こちらの「議事次第」を読むと、話し合われたのは(1)戦略的課題(労働力と働き方)と(2)歳出分野の重点化・効率化(社会保障)の2点。その内(1)において民間議員から提案されたのが「残業代ゼロ法案」だったようです。 続きを読む

時間外労働に関し、事業者が労働者にとるべき措置

厚生労働省が事業者に求める措置とは

今回も長時間労働の問題に関して取り上げます。

特別条項付きの36協定を締結すれば、限度基準を超過した法定時間外労働(以下「時間外労働」)を合法的に命じるられるようになることは前回ご紹介しました。「1年の半分を超えない」という制限にはかかるものの、特別条項付き36協定が締結された事業所においては月100時間超の時間外労働も理論上可能となります。この点について、若干の補足をしておきます。

前回のエントリーでも少し触れておきましたが、実のところ、国は必ずしも労働時間の延長を際限無く認めている訳ではありません。「過重労働による健康障害防止のための総合対策」(平成18年3月17日付 基発第0317008号)において、「事業者」(「使用者」とほぼ同義だが、それより若干狭い概念)に以下の措置をとるよう求めています。 続きを読む