パワハラについて、改めておさらいを

パワハラをめぐる現状

社会人としてすでに働いていらっしゃる方、もしくはこれから社会に出て働こうとする学生の方で、「パワー・ハラスメント」(以下「パワハラ」)という言葉を聞いたことが無い方はほとんどいらっしゃらないと思います。

数年前、初めて「パワハラ」という言葉がマスメディアに取り上げられた時には、主に使用者側から

この程度の言動がパワハラ扱いされるのか

仕事は辛くて当たり前、こんなことまで役所に口出しされては現場は立ち行かくなる

といった言葉が多く出されていたように記憶しています。しかし、「パワハラ」はその後も死語となることなく、世間に広く浸透していきました。今や、職場の問題を象徴する言葉として、「セクハラ」に比類するほどの浸透度合いと言って差し支えないと思います。 続きを読む

競業避止義務、その問題の本質とは

労働相談の現場では、相談員の頭を悩ます難しい問題にしばしば直面します。

具体的には、私傷病による休職制度の検討や、営業成績が振るわない社員への降格措置の妥当性転居を伴う配転命令の是非といった問題です。これらに共通しているのは、「明確で分かりやすい基準が存在しない」ということ。

賃金未払いやサービス残業、最低賃金を下回る賃金といった問題に対しては、労働基準法24条、同法37条、最低賃金法4条という明確な基準が有りますので、「法違反ですから労基署に申告してみてはどうですか」という結論を比較的容易に導き出すことができます。しかし、前述した「明確で分かりやすい基準が存在しない問題」については、こういった基準を当てはめて考える事が出来ないので、相談者に対してどのようにアドバイスをするべきか、相談員は頭を悩ませることとなります。 続きを読む

就業規則は会社の敵?味方?

ここしばらく、労働者側の視点に立った記事が続いていましたので、今回は会社側から見た問題を取り上げてみましょう。

仕事の現場で就業規則はどう扱われているか

私自身が見聞きした話もそうですし、他の社労士の先生方からお聞きした話もそうなのですが、会社経営者の方々には「就業規則は労働者になんか見せない」「鍵のかかる金庫や引き出しの中に仕舞ったまま」という人が少なくないようです。

おそらく、就業規則を労働者に見せてしまうことで、無暗やたらに年次有給休暇を要求されてしまったり、法外な額の残業代を支払うよう請求されてしまうのではないかという不安から、そのような行動に出てしまうのではないかと推測します。 続きを読む

未払い残業代請求のポイント③…金額をどのように計算すべきか

前回、前々回と、未払い残業代請求においてポイントとなる論点を取り上げてきました。今回はその最終回です。就業時間の記録労働時間の定義の他にポイントとなるのは、どのような論点なのでしょうか?

未払い残業代の金額はどのように計算すべきか

法律上の「労働時間」に該当する時間が何時から何時までであるかを確定し、それを月単位で集計して各月の総労働時間を算出した後は、それを具体的な金額に計算しなおす作業が必要が有ります。

この未払い残業代の計算において重要となるのが、所定労働時間や基本給、諸手当の額といった「労働条件」です。この労働条件がどのように定められているかによって、未払い残業代の金額が何円になるのかが大きく変わってきてしまいます続きを読む

労働時間の定義…未払い残業代請求のポイント②

前回のエントリーでは、未払い残業代請求のポイントとして3つの論点が有ることをご紹介しました。その内の一つ、「実際に職場に居た時間は何時間か」については前回ご説明した通りです。今回は、2つめの論点について以下にご説明したいと思います。

職場に居た時間が法的に「労働時間」といえるか

企業経営者の方がタイムカードを利用したがらない理由の一つに、「タイムカードに打刻された時間は全て労働時間と認めなければならないんじゃないか」という誤解が有るのではないかと思います。 続きを読む

未払い残業代請求のポイント①…就業時間の記録

残業したのに、残業代を払ってもらえない」…労働相談の現場で、多くの相談者から寄せられるお悩みです。書店に行けば、労使それぞれの立場から書かれた「未払い残業代」の書籍が棚に並べられているのを見かけますし、ネット上では「残業代請求」を売りにした弁護士事務所のバナー広告を多く見かけるようになってきています。

一昔前なら、「仕事なんだから少しぐらいのサービス残業は当たり前!」というコンセンサスが労使双方にできていたのかもしれません。しかし、「男は仕事、女は家庭」といった価値観が過去のものとなり、労働者の権利意識が高まりつつある昨今では、もはやそのような考え方は通用しなくなってきています。経営者が「ウチは中小企業なんだから残業代なんかいちいち払っていたら潰れてしまうよ」といって、法律を知らない労働者を誤魔化すことができなくなりつつあるのです。 続きを読む

有給休暇の相談…労基署からのアドバイスとは

ウチの職場では年次有給休暇を使わせてもらえない」「上司に相談したら、『パートには有給休暇が無い』と言われた」…このような悩みをお持ちの方は多くいらっしゃることでしょう。実際の労働相談の現場でも、ほぼ毎日と言っても良いくらい頻繁に寄せられる相談です。

以前のエントリーでも取り上げたように、年次有給休暇は、労働基準法第39条で認められた労働者の権利です。有給休暇を消化するのに上司の許可などは原則として不要であり、労働者が「○月×日に有給休暇を使いたい」と申し出たら使用者はそれを認めなければなりません(ただし、業務の正常な運行を妨げる場合は使用者側に日にちを変更する権利が与えられています。これを時季変更権と言います)。 続きを読む

労働時間について、生じやすい誤解(後編)

前回に引き続き、今回のエントリーも労働時間に関する話題です。

労働基準法(以下「労基法」)では、労働時間の上限を日単位(8時間)及び週単位(40時間もしくは44時間)でしか定めておらず、月単位で見たときに総労働時間が160時間~184時間と変動してもそれは違法とならない、というのが前回のお話でした。

しかしながら、特に職場で総務関連のお仕事をされている皆様の中には、「1ヶ月の労働時間の上限は171時間とか、177時間じゃないの?」と考えていらっしゃる方もおられます。なぜそうなるのでしょうか? 続きを読む

労働時間について、生じやすい誤解(前編)

この間、私が受け付けた労働相談で「あれっ?」と思う出来事がありました。労働時間に関する内容です。

皆さんは、労働基準法(以下「労基法」)で定められた労働時間の限度をご存知でしょうか?これはお分かりの方も多いでしょう。そう、「1日8時間、1週40時間(従業員10人未満の飲食店や小売店等には、週44時間まで働かせられる特例有り。労基法施行規則25条の2)」ですね。間違えやすいのが、「週休二日制」に対する考え方。これは法律用語ではなく、単にマスメディアが広めた俗語に過ぎません。法律上は、「1週に1日、もしくは4週に4日以上」の休みを与えさえすれば良く、「週に2日休ませなさい」と定められてはいないのです。 続きを読む

「過労死等防止対策推進法」とは

今年の通常国会において成立し、6月27日に公布された「過労死等防止対策推進法」。同年11月1日が施行日と定められたのに伴い、厚生労働省で「過重労働解消キャンペーン」を実施中であることは、昨日のニュースで取り上げた通りです。

この「過労死等防止対策推進法」ですが、具体的にはどういう内容の法律なのでしょうか?「過労死」「防止」「対策」といった言葉が名前に含まれているのですから、残業を月に100時間させた雇い主には罰則を適用するだとか、労働者を過労死させた雇い主に対して巨額の賠償金を義務付ける法律ができたかのようにも思えます。今回のエントリーでは、その辺りを取り上げてみましょう。 続きを読む