通知カードの受領拒否でマイナンバーは破綻する!?

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twitterで広まっているつぶやきとは

最近、twitterにて、以下のようなつぶやきが拡散されているようです。

政府が一番恐れているのがマイナンバーの受け取り拒否です。 各家庭へ簡易書留で送られてくるので、不在だったら不在票がポストに入れられます。 7日以内に郵便局へ取りに行くか再配達を指定しないと、政府へ返却されます国民の過半数が拒否したら、マイナンバー、終わります。

今年10月から個人に対するマイナンバーの通知が始まる事、そしてその通知カードは簡易書留郵便で各世帯に発送される事はこのブログでも既に取り上げました。

このマイナンバーの通知について言及しているのが、上記のつぶやきです。そこで主張されているのは以下の2点。

  • マイナンバーを通知する簡易書留郵便は受け取りを拒否することができる
  • 国民の過半数が受け取りを拒否することで、マイナンバー制度そのものを破綻させられる

その内容の真偽はさておき、このようなまとめサイトが作られる程度には拡散が進んでいるようです。これまでマイナンバー制度について何回か取り上げてきた当ブログとしても、このつぶやきについては無視できないところ。

そこで今回は、通知カードの受け取り拒否について検証していきます。本当に、上記のつぶやきのような方法でマイナンバー制度を終わらせる事が出来るのでしょうか?

受け取り拒否と留め置き期間経過は全くの別物

マイナンバー制度を終わらせられるか否かを論ずる前に、件のつぶやきが抱える、文章としての重大な欠陥について指摘しておきたいと思います。

それは、「受取人の受領拒否による返送」と「受取人不在による留め置き期間経過後の返送」とを、読む人に混同させてしまう書き方になっている点です。この2つは、そもそも全くの別物です。

自分宛てに送られてきた郵便物について、受け取りを拒絶することができるのは間違いありません。日本郵便㈱のホームページで公開されているこちらのQ&Aでも、それを認める回答が出されています。受取人が郵便物の受領を拒否した場合、その郵便物は局内に留め置くことなく即座に差出人あてに返送されます

それに対し、書留郵便などの受取人が不在だった場合は、配達員が「不在票」を郵便受けに投函し、配達局に一旦持ち帰ります。その後、7日間の留め置き期間を設けてその間に再配達を試み、期間中に再配達できなければ差出人に返送することとなります

このように、「受け取り拒否による差出人への返送」と「受取人不在による差出人への返送」とは全く異なるものです。しかし件のつぶやきの書き方では、「受け取り拒否」という言葉を「受取人不在による返送」という意味で使っているようにも読めてしまいます

仮に「受取人不在で、通知カードを政府に送り返してしまえ」という意味だとしたら、何時届くか分からない郵便物を受け取らないために、わざわざ自宅を留守にしておけとでも言うのでしょうか?

また居留守を使うにしても、自宅に届く書留郵便が通知カードだけとは限りません。居留守を使ったために、通知カード以外の大切な郵便物を受け取れなくなってしまう可能性も有ります。そういったリスクについて、本当にきちんと考えているのでしょうか?

細かいことのように思われるかもしれませんが、内容の信ぴょう性を検証する上で、このような点を指摘しておく事は必要だと考えます。

通知カードを受け取ろうが受け取るまいが…

それでは、本題の「通知カードの受け取りを拒否することでマイナンバー制度を破綻させられるか」について。これに対しては、「そんな馬鹿な事をしても労力の無駄だから、素直に通知カードを受け取ってください」と言わざるを得ません。

なぜなら、通知カードを受け取ろうと受け取るまいと、各個人にマイナンバーが割り当てられている事実に変わりは無いからです。個人に向けた通知カードの発送は、単に「あなたに割り当てられたマイナンバーはこの番号ですよ」と政府がお知らせするに過ぎません

そもそも、個人番号関係事務において、マイナンバーの提供を拒絶される事態については政府も織り込み済みです。こちらのQ&Aにも在るように、会社の従業員等がマイナンバーの提供をどうしても承諾しない場合の対応法が既に紹介されています。

具体的にどのような対応となるかについては明示されていないものの、おそらくはマイナンバーの記述が無くても各種書類を受領する、という対応になるのではないでしょうか。すなわち、通知カードの受領拒否やマイナンバーの提供拒否といった行動をとる人間が現れたところで、制度の存続を揺るがすような事態にはならないということです。

通知カードの受領拒否やマイナンバーの提供拒否をする人間が多数現れる可能性は有るのでしょうか。そもそもそういった行動は、郵便配達員や会社の総務担当といった人々の負担をいたずらに増やすだけのものでしかありません。

民度の低下が指摘される昨今ではありますが、過半数もの日本人が果たしてそんな行動に賛同するでしょうか?ちょっと考えてみただけでも、現実性がきわめて乏しい発想である事が分かります。つまり、そんな事態はそもそも生じないということです。

以上、twitter上で拡散されているつぶやきについて検証してきました。結論としては、このつぶやきで語られている内容は根拠の乏しいデマであると言わざるを得ません。このエントリーを読んで下さる皆様におかれましては、通知カードを素直に受理していただきますようお願いいたします。また会社側としても、従業員への正しい情報提供や教育が必要であると言えるでしょう。