マイナンバー実務のポイント…本人確認、事前取得など

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 マイナンバーと社員番号の関係

特定個人情報保護委員会のホームページで公開されている「特定個人情報の適正な取り扱いに関するガイドライン(事業者編)」(以下「ガイドライン」、全文はこちら)。このガイドラインの内容について、当ブログではこれまで3回に渡ってご紹介してきました。

まず最初に「特定個人情報の保護措置」、次に「安全管理措置(基本方針の策定~人的安全管理措置)」、最後は「安全管理措置(物理的、技術的)及び中小規模事業者に認められる特例的対応」です。

今回は、それらのエントリーで取り上げてはこなかったものの、実務において疑問点が生じたり何らかの問題が生じると予想されるポイントを、ピックアップしてご紹介していきたいと思います。また今回のエントリーをもって、ガイドラインの内容のご紹介を一区切りさせていただくつもりです。

・個人番号(以下「マイナンバー」)は社員番号として使う事ができない

今年10月から、住民票を有する全ての個人に対して通知されるマイナンバー。この12桁の番号を、社員番号としてそのまま使用する事はできません。マイナンバーは税や社会保障に関する手続きにのみ取得や利用が許されていますが、社員番号はそれ以外の用途(例えば営業成績の管理等)にも使われる可能性が有ります。よって当然と言えば当然の結論なのですが、ここで一つの疑問が生じます。

「マイナンバーそのものを使うのではなく、一定の法則で変換した番号なら大丈夫なのか?」

例えば、0~9の数字をアルファベットのA~Jに対応させ、12桁の数字を12個のアルファベットの羅列に変換するような場合です。具体的には、123456789012 というマイナンバーを与えられた社員に対し、BCDEFGHIJABC という社員番号を付与することが考えられます。

結論から言えば、このような社員番号を与える事はできません。たとえマイナンバーそのものではなくても、一定の法則の下にマイナンバーを変換したものは「個人番号」に該当することになりますので、その取得と利用には法律の制限がかかります。

マイナンバーは何時から取得できる?

・マイナンバーの事前取得はOK

事業者が従業員にマイナンバーの提供を求めるのは、「個人番号関係事務又は個人番号利用事務を処理するために必要があるとき」になります。具体的には、源泉徴収票や各種社会保険関係書類の作成事務といった「個人番号関係事務が発生した時点」で求めるのが原則です。

しかし実際には、法人である事業者と個人とが労働契約を締結した時点で、その個人について雇用保険や社会保険の各種手続き、または源泉徴収票の作成事務が必要となる事が予想されます

そのような場合は、実際に個人番号関係事務が発生した時点まで待たなくても、当事者同士で労働契約を締結した時点でマイナンバーの提供を求めることが可能であると解されます。また、(ハローワークに提出する書類にマイナンバーの記載が必要になる)平成28年1月まで待たなくても、今年10月から従業員のマイナンバー取得が可能です。内閣官房の特設ページでもその旨の周知が行われています。詳しくはこちらをご覧になってください。

本人確認の際に必要な書類とは

・本人確認の手続き

事業者が従業員からマイナンバーの提供を受ける時は「本人確認」の手続きが必要になります。この本人確認の手続きは、本人から提供を受ける場合(従業員自身の雇用保険被保険者取得届など)と本人の代理人から提供を受ける場合(健康保険被保険者(異動)届など)とで必要な書類が違ってきます。

本人から提供を受ける場合、提示書類としてまず考えられるのが個人番号カードです。この個人番号カードは、平成28年1月以降に申請者に対して交付されます。個人番号カードには、住所や氏名・生年月日等が記載されており、運転免許証や健康保険証のような本人確認書類として使用できます。現在使用されている書類の中では、住民基本台帳カードに近いと言えるかもしれません。個人番号カードの提示を受けた場合は、それだけで本人確認が可能です。

申請者にしか交付されない個人番号カードに対し、今年10月から発送される通知カードは、住民票を有する全ての個人が所有する事になります。この通知カードを使っても、本人確認は可能です。ただし通知カードは本人確認書類とはみなされないので、この場合は運転免許証などの本人確認書類を併せて提示しなければなりません

通知カードを失くしてしまった場合は、住民票の写し又は住民票記載事項証明書を提示することとなります。この場合も、運転免許証などの本人確認書類を併せて提示しなければなりません。他の書類で代替可能とは言え、通知カードはマイナンバーが記された重要書面です。失くすことが無いよう、細心の注意を払ってください。

本人の代理人からマイナンバーの提供を受ける場合は、これまで挙げてきた各種書類の他に「代理権確認書類」の提示を受けることになります。具体的には、戸籍謄本や委任状などです。それらの書類を用意するのが困難な場合は、本人の健康保険証などの提示を受けるとか、本人に直接電話をかけて確認する方法などが想定されています。

以上、実務において疑問点や問題が生じそうな箇所を取り上げました。今回のエントリーを合わせると全部で5回(その内、一回はガイドライン以外の内容。くわしくはこちら)に渡ってマイナンバー制度を取り上げてきたことになりますが、その内容は制度の概要をご紹介した程度に過ぎません。

このエントリーを書いている時点では、マイナンバーの通知が始まるまでおよそ6カ月の期間が有ります。この間にも、マイナンバー制度について各種方面から様々な周知がなされる事でしょう。当ブログでも、引き続きそれらの情報をキャッチしていきたいと考えています。