消費税軽減制度…マイナンバー利用範囲の拡大

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財務省が消費税の軽減税率を検討

およそ3カ月ぶりのブログ投稿です。前回の投稿からかなりの間隔が開いてしまいましたが、その理由は別の記事でお書きしましたので、さっそく本題に入らせていただきます。

財務省が検討している「日本型軽減税率制度」の全容が、各種ニュースサイトにて一斉に報じられました。この「日本型軽減税率制度」をかいつまんでご説明すると、来年10月に予定されている消費税率10%への引き上げに際し、(酒類などを除いた)食料品等の税率を8%のままで据え置く制度のことを指します。

各種ニュースサイトで報じられている内容をまとめると、以下のようになるようです。

  • 消費者は、食料品等を購入する際にも一旦10%の消費税を支払う
  • その際、小売店や飲食店のレジにて個人番号カード(来年1月以降、役所の窓口にて無料で発行できるICカード)を提示する
  • 小売店は特殊な端末を使い、番号カードからマイナンバーを読み取る(住所や氏名などの個人情報は読み取らない)
  • 買い物データとマイナンバーを暗号化し、オンラインでポイントセンター(政府が新たに設置)に送信する
  • 消費者があらかじめ登録しておいた銀行口座に、余分に支払った消費税が還付される

これを図解すると、以下のようになるかと思われます。なお、私はデザインの専門家ではありませんので、出来栄えの稚拙さについてはお許しください…。マイナンバー税金還付

この制度の導入にあたり、政府は個人情報の保護に細心の注意を払う方針だそうです。また、上述したようにあくまでも読み取るのはマイナンバーだけであって個人情報は一切読み取らないこと、ポイントセンターへの送信の際はデータを暗号化することを強調しています。

制度への懸念と疑問点

しかしこの制度、パッと考え付くだけでも以下のような懸念や疑問点が浮かび上がります。

  • マイナンバー読み取り機の導入や維持に少なからぬコストがかかり、特に個人商店にとっては重い負担となる
  • 食料品だけでなく外食も軽減税率の対象となるが、イベントやお祭りでの出店(でみせ)では対応法はどうなるのか
  • 店員にマイナンバーを提示した際、スキミングの被害に遭わないか
  • 社会保険への加入情報等、様々なデータと紐づけられたマイナンバーが記録されたカードを買い物のたびに持ち歩く事の危険性
  • データは暗号化されると言うが、本当にそれだけで流出や漏えいの防止ができるのか
  • 個人番号カードを発行していなかったり、カードの提示を拒むような人は消費税の還付を受けられないということか
  • マイナンバー読み取り機の導入は各小売店や飲食店に義務付けられるのか
  • レジにて2%分余計に支払った消費税は全額還付されるのか還付額に上限が設定されはしないか
  • マイナンバー読み取り機を導入した店舗における安全管理措置はどうなるのか

仮に、小売店や飲食店に読み取り機の導入が義務付けられなかった場合、そのお店は機械の導入やメンテナンス等にかかる金銭的な負担からは逃れられます。しかし消費者からすれば、機械を導入した店舗で同じような商品を購入するのに比べて割高になってしまうため、導入しなかった店舗からは結果的に客足が遠のいていってしまうのではないかと懸念されます。

また、当ブログでも数回にわたって取り上げてきたように、マイナンバーは各種の情報と紐づけられた大変重要な個人番号です。そのため、マイナンバーを取り扱う企業には安全管理措置が必要とされており、漏洩や流出を防ぐための様々な手段を講じるよう求められています。このようなセンシティブな情報が記録されたカードを個人が屋外で持ち歩く事には、もう少し慎重であるべきではないでしょうか。

仮に政府が「消費税の還付を受けられなくてもかまわない人は、番号カードを提示しなくても良い」と言うのであれば、番号カードの提示を拒む人は、本来支払う必要の無い税金を余計に支払う事になってしまいます。同じ店で同じ商品を購入したのに、税金を多く払う人と少なく済む人が出てくるという訳です。このような差が生じることに、本当に法的な問題は無いのかも疑問です。

マイナンバーについてご紹介してきましたが…

これまで当ブログでは、数回にわたってマイナンバー制度を取り上げてきました。人事労務管理の専門家の端くれとして、雇用保険や社会保険において今後必要とされる手続きを皆様にお知らせしなければ…という思いがその動機の一つです。

雇用保険や社会保険は、(一部例外は有りますが)法律で加入が義務付けられた制度です。よってそれらの手続きの際にマイナンバーの取得や記入が求められている以上、各企業の担当者様には「従業員の皆さんからマイナンバーを教えてもらってください」とアドバイスせざるを得ません。

しかし今回明らかになった軽減税率制度については、どうにも或る種の危険性を感じてしまいます。素人考えなのは百も承知ですが、本当にこのままの形で導入されるのでしょうか。今後の推移を注視していきたいと考えます。