労働者派遣法改正案…イラスト付きで、より分かりやすく

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改正労働者派遣法、三度目の正直なるか!?

去る9月8日、参議院の厚生労働委員会で労働者派遣法(以下、単に「派遣法」)の改正案が可決されました。既に衆議院で可決済みの改正案ですが、参議院で一部修正されたため、衆議院で再度審議する必要が有ります。予定では本日開催される衆議院の本会議にて可決されることになっていますが、この投稿を執筆している時点では可決されたとの報道は入っていません。

二度の廃案を乗り越え、遂に可決される見通しの派遣法改正案。その概要については、以前にも当ブログで取り上げました。しかし前回の記事では文章のみでご説明したため、せっかくお読みいただいた方にもその内容が今一つ伝わりにくかったのではないかと思います。

そこで今回の記事では、自作の画像を用いて、派遣労働の現場がどのように変わるのかをご説明することにしました。おととい投稿した記事で用いたのもそうですが、今回の画像も私のオリジナル作品です。繰り返しになりますが、所詮はデザインの素人が作った代物に過ぎませんので、出来栄えについてはご容赦ください…。

これまでの派遣労働の在り方と問題点

さて改正前の派遣法では、派遣労働者の受け入れ期間に制限が設けられています。受け入れ期間は原則として一年間、過半数労働組合等の意見を聞く事で最長三年間まで受け入れが可能です

その一方で、派遣労働者が担当する仕事の内容によっては、期間の制限無く派遣労働者を受け入れることも認められています。具体的には、「ソフトウェア開発」「事務用機器操作」「テレマーケティングの営業」などがそれに該当します。これらの業務は専門性が高いため、派遣労働者が常用的に正社員にとって替わるおそれが少ない…というのが、表向きの理由のようです。

派遣労働者の受け入れ期間に制限が無い業務を「政令26業務」または「専門26業務」といい(この記事では「26業務」に統一します)、受け入れ期間を最長三年間と定められた業務を「自由化業務」といいます。

自由化業務のイメージは以下の図の通りです。

派遣自由化業務

また、26業務をイメージ化すると以下のようになります。

派遣専門26業務

この制度の下では、「26業務に就くはずだったのに、実際の現場ではそれ以外の雑用ばかりやらされる」「期間の制限が無いばかりに、いつまでたっても派遣労働者のままでキャリアアップの機会が望めない」等といった問題が生じてきました。

また今年の10月1日からは、これまで延期されてきた「労働契約申込みみなし制度」が施行されます。この制度を一言で表すと、「派遣先が違法派遣と知りながら派遣労働者を受け入れていた場合、派遣先が派遣労働者に対して直接雇用の申し込みをしたとみなす制度」です。上記のような「26業務として派遣労働者を受け入れたはずなのに実際は雑用ばかり」という事例だと、これに該当してしまい、派遣先に直接雇用の義務が生じるおそれが出てきます

派遣法改正によってどう変わるか

以上のような経緯から、今回の派遣法改正案では、「26業務と自由化業務」といった区別が撤廃されることになりました。法改正後は、業務の種類にかかわらず、派遣労働者が同じ職場で働き続けられる限度が三年間に統一されます

派遣先が派遣労働者を受け入れられる期間も、原則として三年間です。ただしこの受け入れ期間は、労働者の過半数が加入する労働組合(以下、単に「過半数労働組合」)等の意見を聞く事で更に三年間延長することが可能です。延長の回数については、特に制限は有りません。また、過半数労働組合からは意見を聞きさえすれば良く、同意を得る事までは求められていないので、仮に反対されても受け入れ期間を延長する事は可能です。

言いかえれば、「人を入れ替えさえすれば、派遣先は派遣労働者をずっと受け入れ続けることができる」ということになります。それをイメージ化したのが以下の図です。

法改正後の派遣労働

この制度の根底には、「派遣労働はあくまでも臨時的・一時的な働き方である」「派遣労働者は正社員にとって替わる存在であってはならない」といった考えが在ります。その是非はともかくとして、派遣労働者にしてみれば、否応なく派遣労働を3年間で打ち切られることになってしまうわけです。これでは生活の安定など望むべくも無く、当の本人としてはたまったものではありません。

そこで改正案では、派遣労働者が派遣労働を打ち切られた後も仕事に困る事が無いよう、派遣元に対して以下の配慮を求めています。

  • 派遣先への直接雇用の依頼
  • 新たな就業機会(派遣先)の提供
  • 派遣元事業主における直接雇用

また、派遣先に対しても、1年以上継続して同じ職場に派遣された派遣労働者に対し雇用契約を申し込むよう努力義務を課しています。

しかしこれらの措置のいずれも、契約を打ち切られた派遣労働者の再就職を保証するものではありません。よって、その実効性については疑問が残ります。

以上、派遣法改正案について大まかなご説明をさせていただきました。この記事における説明はあくまで概要に過ぎず、細かい点を挙げればとても限られたスペースでは足りません。改正案が成立した後は、厚生労働省のホームページなどにも詳しい資料がアップロードされることでしょう。より詳しく知りたい方は、そちらをご覧になるのもよろしいかと思います。