パート労働者は法改正で救われるか

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  来年4月より、パートタイム労働法が改正

平成26年4月16日に成立し、同月23日に公布された「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律(以下「改正パートタイム労働法」)」。来年4月1日の施行日に備え、厚生労働省のwebサイトでは「パートタイム労働法の改正について」というページの中でその概要条文新旧対照表等を公開しています。

短時間労働者(以下「パート労働者」)をめぐっては、正社員と変わらない職責を負わされているにも関わらず、非正規労働者であることだけを理由として不当に低い賃金で働かされている、いわゆる「ブラックバイト」が社会問題になっています。パートタイム労働法の今回の改正は、そういったブラックバイト問題の改善に向けた一歩となり得るのでしょうか?

改正のポイントとは

改正パートタイム労働法のポイントは、以下の通りです。

・「通常の労働者と同視すべき短時間労働者」の範囲が拡大された

パートタイム労働法では、「通常の労働者と同視すべき短時間労働者」について、短時間労働者であることを理由として、通常の労働者と差別的取り扱いをすることが禁止されています。この「通常の労働者と同視すべき短時間労働者」と見なされるためには、①職務の内容が通常の労働者と同一 ②人材活用の仕組み(人事異動の有無や範囲)が通常の労働者と同一 ③期間の定めの無い労働契約を締結している という3つの要件が必要だったのですが、今回の改正で、①と②を満たすことで「通常の労働者と同視すべき短時間労働者」と見なされることになりました。

・不合理な待遇の禁止

パート労働者に対し、正社員と異なる待遇を定める際には、その待遇は「不合理」なものであってはならないと明文化されました。パート労働者の待遇が不合理であるか否かは、業務の内容及び業務に伴う責任の程度(条文では「職務の内容」と総括)、配置の変更の範囲、その他の事情を考慮して判断することになります。

・雇い入れ時の説明義務を導入

パートタイム労働法では、賃金の決定や教育訓練の実施、福利厚生施設の利用、正社員への転換といった内容について、事業主がパート労働者に説明する義務が課せられています。これまでは、この説明義務は、「(パート労働者から)求めがあったとき」に限られていたのですが、今回の改正で、事業主がパート労働者を雇い入れたときにも同様の義務が課せられるようになります。

・相談体制の整備義務

事業主は、「(パート労働者の)雇用管理の改善等に関する事項」に関し、パート労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制を整備しなければならないと定められました。この「雇用管理の改善等に関する事項」には、労働時間、退職手当その他の手当、福利厚生施設といった内容が含まれています。

・厚生労働大臣による事業主名の公表

雇い入れ時の労働条件明示義務、差別取り扱いの禁止、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用、通常の労働者への転換といった規定に違反している事業主に対し、厚生労働大臣は、是正勧告をすることができます。今回の改正で、事業主がこの勧告に従わなかったときは、その旨を公表することができるようになりました。

・親族の葬儀等への出席による欠勤を理由とした解雇の扱い

厳密には法改正ではなく、「事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等に関する措置等についての指針」の改正です。この指針では、パート労働者が事業主に説明を求めた事を理由とした不利益取り扱い(解雇や賃金の引き下げ)が禁止されているのですが、それに加え、「(パート労働者が)親族の葬儀等の出席のため勤務しなかった事を理由として解雇等が行われる事は適当でない」と明記されました。

・「通勤手当」の定義の補足

これも法改正ではなく、パートタイム労働法施行規則の改正です。パートタイム労働法では、パート労働者の賃金について「通常の労働者との均衡を考慮し」て決定するように努めることとされています。この「賃金」からは、通勤手当や退職手当といった一部の手当は除外されているのですが、今回の改定で、通勤手当に関しては「職務の内容に密接に関連して支払われるものを除く」という補足が加えられました

改正パートタイム労働法による影響

以上、今回の法改正でポイントとなるところを挙げてきました。これらの改正によって、職場はどのような影響を受けることになるのでしょうか?

少なからず影響を与えるものとして、まず挙げられるのが、「通常の労働者と同視すべき短時間労働者」の範囲の拡大でしょう。

冒頭に挙げたブラックバイトですが、これまでの法律では、例え正社員とほとんど同じか、それ以上の職責を負わされているパート労働者であっても、有期労働契約を締結している限り「通常の労働者と同視すべき短時間労働者」とは見なされませんでした。

学生アルバイトにせよ、専業主婦のパート労働にせよ、短時間労働契約には3カ月や半年といった契約期間の定めが有るのがほとんどです。そのため、重い職責を負わされていたり不本意な人事異動を命じられたりしているにも関わらず、差別的取り扱いを禁じたパートタイム労働法の保護から外れてしまう人が少なくありません。今回の改正により、こういった人達の労働条件が改善される効果が期待できます。

また、賃金の決定や教育訓練の実施等について、パート労働者の雇い入れ時に説明する義務が導入されたことも、少なからず職場に影響を与える事でしょう。

パート労働者の雇い入れに関しては、賃金の額や所定労働時間、職務の内容といった基本的な事項ですら満足に説明されないケースが少なくないのですが、今回の改正により、更に「賃金の決定」や「教育訓練の実施」といった項目も説明義務に含まれる事になります。ロクに事前の説明もせずにパート労働者を働かせようとする事業主に対しては、より悪質であると判断されやすくなると思われます。

パート労働者の相談は雇用均等室へ

改正パートタイム労働法では、厚生労働大臣に、必要に応じて事業主に報告を求めたり、助言・指導・勧告をする権限を認めています。そして厚生労働大臣から求められたにも関わらず報告をしなかったり、虚偽の報告をした事業主に対しては20万円以下の過料に処するとしています。

厚生労働大臣からの勧告に従わなかった事業主については、その旨を公表されてしまうことは、既に述べた通りです。

行政による、これらの援助を得るためには、行政機関の相談窓口で職場の問題や労働者の悩みを話してもらう必要が有ります。パート労働者の相談を受け付けている窓口は、各都道府県労働局の「雇用均等室」という部署です。担当の相談員が常駐しているはずなので、現在の職場環境に疑問を感じている方はそちらを訪れてみてください。

当事務所でも、皆様からのご相談を承っております。こちらのお問い合わせファームをお使いの上、お気軽にご相談ください。