残業代ゼロ法案に新たな動き…厚労省の提示した制度とは

残業代ゼロ法案の新たな動き

このブログでも何回か取り上げてきた、いわゆる「残業代ゼロ法案」。つい先日、厚生労働省で新たな動きが有ったようです。

厚生労働省には、諮問機関(厚生労働省に対して意見を述べる機関。学識経験者等で構成され、その意見に拘束力は有りません)として「労働政策審議会」が設置されています。この労働政策審議会は、扱うテーマによって、更に「労働条件分科会」「安全衛生分科会」等に分かれます。

その中の一つである「労働条件分科会」が1月16日に厚生労働省で開催され、その中で残業代ゼロ法案の具体的な中身が提案されました。

その内容は、「今後の労働時間法制の在り方について(報告書骨子案)」と書かれた、こちらから読む事が出来ます。 続きを読む

いっしょに検証!年金マンガ

厚生労働省の年金マンガとは

今朝のyahoo!ニュースに、こんな記事が有りました。

年金の「世代間格差」、本当にないのか 厚労省年金マンガに「色々ひどい」と反発

厚生労働省がホームページ上で公開している公的年金の制度や現状を解説するマンガが「色々ひどい」とツッコミを浴びている。

公的年金がなくなることはありません」「若者が損とは言えません」。厚労省としては仕方がない説明なのだろうが、若い世代を中心とした読者を納得させることはできず、反発を招いてしまった

(中略)

マンガは「いっしょに検証!公的年金」というタイトルで、全11話86ページが2014年5月14日に公開された。両親と10~30代の兄妹の家族が、年金にまつわる疑問や不安を口にすると、制度に詳しい「年金子(とし・かねこ)」が「ご安心くださーい」といって解説する内容だ。

公開直後もマンガについて書き込む人がいなかった訳ではないが、15年1月中旬ごろに、一部ツイッターユーザーに発掘されたらしく、まとめサイトに取り上げられ、ネットで注目を浴びた

(後略)

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労働条件通知書に潜むワナ

書面による労働条件の明示義務

労働基準法第15条で使用者に義務付けられている、「労働条件の明示」。

同条文では、労働契約の締結にあたり、労働者に対して労働条件を明示しなければならない事、始業就業の時間や賃金計算方法といった特に重要な事項は書面によって明示しなければならない事、などが定められています。

建設業や運輸業と言った一部の業種では、未だに口約束によって労働契約が締結されるケースが多く、それによって引き起こされる労使トラブルが後を絶ちません。しかし労働の現場を全体的に見れば、「人を雇い入れたときには労働条件を書面で明示しなければならない」という意識はだいぶ浸透してきたように思います。 続きを読む

生活残業、会社と従業員との認識のズレ

会社を悩ませる「生活残業」

労働基準法なんか守っていたら、ウチの会社はつぶれてしまう

多くの中小企業経営者から聞かれる言葉です。

この言葉には様々な思いが込められていると思います。人手が足りない、会社の経営が苦しい、景気の先行きが不安だ…等々。そしてその中には、こんな考えも有るのではないでしょうか。

残業に対していちいち馬鹿正直に割増賃金を払っていたら、それを目当てにダラダラと会社に残り続ける従業員が続出する

いわゆる「生活残業」という代物です。従業員からすれば、同じ仕事をするにしても、短い時間で済ませるより長い時間をかけた方がより多くの賃金をもらえるのならば、誰もがそうしようと考えるのはごく自然なことと言えるでしょう。 続きを読む

ブラックバイト問題、使用者側からの反論

 ブラックバイトとは

アルバイトとして働いているにも関わらず正社員と変わらない責任やノルマを押し付けられる、空いた時間にシフトを次々に入れられてしまい学業との両立ができない、仕事を辞めたいと言ったら「損害賠償請求するぞ」と脅された…。

いわゆる「ブラックバイト」が大きな社会問題になりつつあります。

ブラックバイト問題が広まるにつれて、労働問題に詳しい弁護士の先生が、労働法の正しい知識を広めるべく学生相手にセミナーを開いたり、学生自らが労働組合(学生ユニオン)を結成する、などといった動きも徐々に出てきているようです。 続きを読む

パート労働者は法改正で救われるか

  来年4月より、パートタイム労働法が改正

平成26年4月16日に成立し、同月23日に公布された「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律(以下「改正パートタイム労働法」)」。来年4月1日の施行日に備え、厚生労働省のwebサイトでは「パートタイム労働法の改正について」というページの中でその概要条文新旧対照表等を公開しています。

短時間労働者(以下「パート労働者」)をめぐっては、正社員と変わらない職責を負わされているにも関わらず、非正規労働者であることだけを理由として不当に低い賃金で働かされている、いわゆる「ブラックバイト」が社会問題になっています。パートタイム労働法の今回の改正は、そういったブラックバイト問題の改善に向けた一歩となり得るのでしょうか? 続きを読む

パワハラ自殺訴訟…福井地裁のケース

・福井地裁の判決

今朝8時ごろに配信されたyahoo!ニュースの中に、こんな記事が有りました(一部抜粋)。

消火器販売などの「暁産業」(福井市)で勤務していた男性社員=当時(19)=が自殺したのは上司のパワーハラスメント(パワハラ)が原因として、男性の父親が損害賠償を求めた訴訟で、原告の主張を認めて会社と直属の上司に約7200万円の支払いを命じた福井地裁の判決について、原告側が15日までに名古屋高裁金沢支部に控訴した。控訴は12日付。

判決は、男性が手帳に書き残した上司の発言を「典型的なパワハラ」と認定し、会社と、この上司に損害賠償の支払いを命じた。管理職の上司への請求は「パワハラの実態を把握するのは困難だった」と退けた。

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年次有給休暇を使うために必要なこと

労働者の切実な悩み

「年次有給休暇(以下「有給休暇」)を使わせてほしい」

労働相談の現場で皆様から寄せられるご相談や、労働問題を取り扱っているwebサイト、検索キーワード等から察するに、「有給休暇を使いたくても使えない」というお悩みを抱えていらっしゃる方が多くいらっしゃるように思われます。

労働者の意識の変化に伴い、「仕事だけが人生の全てではない」という価値観が広く浸透してきた一方で、慢性的な長時間労働や休日労働により若者を「使い捨て」にする企業(いわゆるブラック企業のことを、厚生労働省ではこう表現しています)が、いまだ数多く存在しています。こういった企業で働き続け、精神的にも肉体的にも限界に近付きつつある労働者が、「少しぐらい休ませてほしい」と考えるのは至極当然と言えるでしょう。 続きを読む

パワハラについて、改めておさらいを

パワハラをめぐる現状

社会人としてすでに働いていらっしゃる方、もしくはこれから社会に出て働こうとする学生の方で、「パワー・ハラスメント」(以下「パワハラ」)という言葉を聞いたことが無い方はほとんどいらっしゃらないと思います。

数年前、初めて「パワハラ」という言葉がマスメディアに取り上げられた時には、主に使用者側から

この程度の言動がパワハラ扱いされるのか

仕事は辛くて当たり前、こんなことまで役所に口出しされては現場は立ち行かくなる

といった言葉が多く出されていたように記憶しています。しかし、「パワハラ」はその後も死語となることなく、世間に広く浸透していきました。今や、職場の問題を象徴する言葉として、「セクハラ」に比類するほどの浸透度合いと言って差し支えないと思います。 続きを読む

競業避止義務、その問題の本質とは

労働相談の現場では、相談員の頭を悩ます難しい問題にしばしば直面します。

具体的には、私傷病による休職制度の検討や、営業成績が振るわない社員への降格措置の妥当性転居を伴う配転命令の是非といった問題です。これらに共通しているのは、「明確で分かりやすい基準が存在しない」ということ。

賃金未払いやサービス残業、最低賃金を下回る賃金といった問題に対しては、労働基準法24条、同法37条、最低賃金法4条という明確な基準が有りますので、「法違反ですから労基署に申告してみてはどうですか」という結論を比較的容易に導き出すことができます。しかし、前述した「明確で分かりやすい基準が存在しない問題」については、こういった基準を当てはめて考える事が出来ないので、相談者に対してどのようにアドバイスをするべきか、相談員は頭を悩ませることとなります。 続きを読む