懲戒処分と降格人事の妥当性…セクハラにあたる言動とは

セクハラによる懲戒処分と降格人事の妥当性が争われる

最高裁「セクハラ発言処分妥当」 処分無効の二審判決破棄

大阪市の水族館「海遊館」の男性管理職が部下の女性にセクハラ発言をしたことをめぐり、出勤停止の処分が重すぎるかどうかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷(金築誠志裁判長)は26日、「管理職としてセクハラ防止を指導すべき立場だったのに、みだらな発言を繰り返し極めて不適切だ」として処分を妥当と判断した

二審判決は処分を「重すぎて酷だ」と無効としていたが、最高裁はこれを破棄し、無効確認を求めた男性側の請求を退けた。(2015年2月26日 14時1分 共同通信)

部下へのセクシュアル・ハラスメント(以下「セクハラ」)が原因で出勤停止の懲戒処分を受け、そのために降格させられた元管理職らが会社を訴えていた事件です。

使用者から労働者への懲戒処分については、労働契約法15条で以下のように定められています。 続きを読む

マイナンバー制度…特定個人情報の保護措置とは

特定個人情報保護委員会が定めたガイドライン

以前のエントリーでも取り上げました、いわゆる「マイナンバー制度」。このマイナンバー制の導入により、平成28年1月以降、社会保障や税、災害対策に関する各種書面についてマイナンバーの記入が必要になりました。

このことは、裏を返せば、個人の氏名・住所・生年月日のみならず、各種税金の納付状況や社会保険への加入状況といった情報までもがマイナンバーに紐付けられていることを意味します。そのため、マイナンバー及びマイナンバーをその内容に含む個人情報(これを「特定個人情報」と呼びます)に対しては、従来の「個人情報」よりも更に厳格な保護措置が求められることとなります。 続きを読む

フレックスタイム制と裁量労働制の見直し…業務への影響は

フレックスタイム制はどのように見直されるか

前回前々回に引き続き、労働政策審議会建議「今後の労働時間法制等の在り方について」(以下「建議案」)の内容を検証します。前回まで取り上げたのは、長時間労働の抑制策労働者の健康確保措置、そして特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)でした。今回は、フレックスタイム制の見直し裁量労働制の見直し、その他について見ていきます。

まずは、フレックスタイム制の見直しから。 続きを読む

労働者の働き過ぎ防止、年次有給休暇の取得率向上

「残業代ゼロ」だけではない!労働政策審議会の建議案

前回に引き続き、厚生労働省の労働政策審議会が作成した建議案の内容を検証します。各マスメディアにて「残業代ゼロ制度」と報道されている、「高度プロフェッショナル制度」については既に取り上げました。今回は、「働き過ぎ」防止策について書かれた箇所を引用し、その内容を検証していきます。

以下、建議案から一部引用します。省略している箇所について知りたい方は、実際の建議案をご覧になってください。 続きを読む

残業代ゼロ法案…健康管理時間は長時間労働の抑制につながるか

残業代ゼロ、ついに導入!?

「高度プロフェッショナル制」導入へ 厚労省、労働改革の報告書まとまる 28年4月の施行を目指す

厚生労働省は13日、労働時間ではなく仕事の成果に応じて賃金を決める新制度「高度プロフェッショナル制」導入を柱とした最終報告書を労働政策審議会の分科会に提示し、了承された。対象者は年収1075万円以上で、研究開発や金融商品のディーリングなど高度な専門業務に限る。同省は今国会に労働基準法改正案を提出し、平成28年4月の施行を目指す。(Sankei Biz 2015.2.13 20:52)

当ブログでも再三取り上げてきた、いわゆる「残業代ゼロ法案」。制度の導入に向け、更に具体的な動きが出てきたようです。 続きを読む

マイナンバー制度と社労士業務

 いよいよ始まるマイナンバー制

平成25年5月24日に成立し、同月31日に公布された「行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(いわゆるマイナンバー法)。この法律に基づき、いよいよ今年の10月からマイナンバーの通知が始まります。

対象となるのは、住民票を有する全ての個人法人。個人と法人とに付与されるマイナンバーには、それぞれ以下のような特徴や違いが有ります。 続きを読む

年金マンガは女性蔑視!?大手マスメディアとネットとのズレ

またも問題視された年金マンガ

厚生労働省のホームページに掲載されている、公的年金制度のPRマンガ「いっしょに検証!公的年金」(以下「年金マンガ」)。この内容に対し、特に若い世代を中心として反発が強まっていることは、以前のエントリーでもご紹介しました。

主にtwitterを中心として、ネット上でこの話題が盛り上がっていたのが先月の半ばごろ。その後は徐々に沈静化していき、少なくとも私の知る範囲では、この話題に関する投稿を目にする事も無くなっていきました。ところが、ここにきて再びこのマンガへの批判が高まってきたようです

ネット上での「旬」はとっくに過ぎ去っているのに、何を今更?という疑問が湧くところではありますが、一体どういう経緯で年金マンガへの批判が高まってきたのか見ていくことにしましょう。 続きを読む

平成27年度の年金額改定率発表…その影響は

 平成27年度の年金改定率発表

先月30日、厚生労働省より「平成27年度の年金額改定について」という発表が有りました。この発表は、各種のマスメディアやブログ等でも既に取り上げられているため、どのような発表だったかご存じの方も多いかと思います。

実際にどんな内容だったかは、こちらをご覧になってください。

発表された内容をかいつまんで説明すると、要は平成27年度に支給される年金額の改定率が決まったという事です。平成26年度と比べて、0.9%引き上げられることになりました。具体的にどのように変わるかについては、以下のモデルケースで紹介されています。 続きを読む

マタハラ訴訟…最高裁の判断とは

 マタハラ訴訟に対する厚生労働省の反応

妊娠後の降格など「マタハラ」…厚生労働省が通達

妊娠や出産などを理由とした職場での嫌がらせ、マタニティー・ハラスメントマタハラ)を防止するため、厚生労働省は23日付で全国の労働局に通達を出し、企業への指導を厳格化するよう指示した。

通達は、女性が妊娠、出産したり、育休を取得したりしてから近い時期に企業が雇止めや降格などをすると、原則として男女雇用機会均等法などで禁止するマタハラにあたるとする内容だ。

これまでは、企業が女性に不利益な扱いをしても、マタハラにあたるかどうかの明確な判断基準がなく、抜け道になっていた。(YOMIURI ONLINE 2015年1月23日 20時52分配信)

昨年10月23日に最高裁にて判決の出た、いわゆる「マタハラ訴訟」を受けての厚労省の動きです。このマタハラ訴訟の最高裁判決は、TVや新聞などの各種マスメディアでも大きく取り上げられ、「マタハラ」という言葉がこの年の「ユーキャン 新語・流行語大賞」の候補にノミネートされるほどの注目を浴びました。 続きを読む

元作業員からの訴え…国はがんの発症に責任を負うか

福島第一原発元作業員からの訴え

社会保険労務士としてではなく、被災地に住む一人の人間として、見逃せないニュースを見つけました。2015年1月18日付、中日新聞朝刊の記事です。

胃と膀胱を全摘 「労災認めて」と訴え

(前略)

事故発生当初、福島第1で4カ月間作業し、その後、胃や大腸など3カ所でがんが見つかった札幌市の男性(56)は、被ばくが原因だとして労災と認めるよう訴えている

(中略)

12年春に血尿が出たため診察を受けると、膀胱(ぼうこう)がん。その1年後、東電の負担でがん検診を受けたら、大腸と胃にがんが見つかった。東電や厚生労働省の窓口に相談したが、「因果関係がわからない」とたらい回しにされたという。

転移でなく3カ所もがんが見つかったのは、被ばくが原因として、男性は13年8月に労災を申請。一方で胃と膀胱を全部摘出し、大腸がんも切除。重度障害者の認定を受けた。

男性は「国や東電は検査を受けろと言うが、労災が認められなければ治療は自費。命懸けで作業をしたのに使い捨てだ。働きたくても働けない。個人では因果関係を立証できない。国は調査するなら徹底的にしてほしい」と語った。

(後略)

福島第一原発において、がれきの撤去作業にあたっていた元作業員の男性(以下、「元作業員」)からの訴えです。原発事故の発生以来、放射線量の急激な増加により、福島第一原発敷地内と周辺地域でがんの発生率が上昇すると懸念されていた事は、皆さんもご存じのことでしょう。ついにその心配が現実のものになってしまったか、という不安を感じさせるニュースです。 続きを読む