未払い残業代を払わせたい…申告・訴訟・労働審判

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長年のサービス残業に耐えて働いてきたけど、もう我慢の限界。仕事を辞める決心が付いた。どうせ辞めるんだから、今までの未払い残業代もついでに請求してやれ…そう考える方は多くいらっしゃいます。しかし使用者に対して未払い残業代を払うように求めたところで、『ウチにはお金が無い』『残業の記録が残って無いから払う理由が無い』『○○手当に残業代を含めており、全部支払済みだ』と、剣もほろろに突き返されてしまうケースがほとんどと言って良いでしょう。

使用者からこのように切り返された場合、労働者一人の力でそれを更に覆すのは非常に困難です。まず不可能と言えるでしょう。それでは泣き寝入りするしか無いのでしょうか?いえいえ、そんな事は有りません。当事者同士の交渉では埒が明かなくなったときに介入できるのが、労働基準監督署(以下「労基署」)であり裁判所なのです。労基署には「申告」、裁判所には「訴訟」「労働審判」といった制度が用意されており、労使間のトラブル解決の手助けをしてくれます。

これら三つの制度は、それぞれ以下のようなケースに適しています。

(申告)

  • 未払い残業代の総額が数万円~十数万円程度
  • 労働条件通知書やタイムカード、給料明細といった証拠があまり残されていない
  • なるべく短い期間で、手間をかけず、無料で利用したい

(訴訟)

  • 未払い残業代の総額が数百万円にのぼる
  • 労働条件通知書、タイムカード、給料明細、就業規則の写しといった証拠を全て用意できる
  • それなりに長い期間や労力を費やすことができ、費用の負担も厭わない

(労働審判)

  • 未払い残業代の額が数十万円以上
  • 労働条件通知書等の証拠をそれなりに用意できる
  • 訴訟ほどの長い期間や多大な労力、金銭的な負担を負う事はできない

もっとも簡単で手軽に利用できる制度が申告、お金も手間暇もかかるけど自らの主張をきっちりと通したいときにオススメなのが訴訟、その両者の中間的な制度が労働審判ということになります。

これら三つの制度にはそれぞれ一長一短が有ります。たとえば申告の場合、無料で手軽に利用できる制度である半面、労基署から使用者への行政指導(是正勧告)には強制力が無いためその実効性にやや弱さが有ります。また訴訟の場合は、裁判所からの残業代支払い命令(勝訴判決)を勝ち取りさえすれば非常に強い実行力が手に入りますが、そこに至るまでには数年間もの歳月や膨大な労力、金銭的負担が必要になることもあります。労働審判は、訴訟ほどの労力は要しないものの和解で決着するケースがほとんどであり、ある程度の妥協が必要です

私は弁護士では無いので訴訟や労働審判には関われませんが、特定社労士として申告制度や(今回は触れませんでしたが)あっせん制度のご案内は可能です。ご興味が有りましたら、何なりとお申し付けください。

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