未払い残業代請求のポイント③…金額をどのように計算すべきか

前回、前々回と、未払い残業代請求においてポイントとなる論点を取り上げてきました。今回はその最終回です。就業時間の記録労働時間の定義の他にポイントとなるのは、どのような論点なのでしょうか?

未払い残業代の金額はどのように計算すべきか

法律上の「労働時間」に該当する時間が何時から何時までであるかを確定し、それを月単位で集計して各月の総労働時間を算出した後は、それを具体的な金額に計算しなおす作業が必要が有ります。

この未払い残業代の計算において重要となるのが、所定労働時間や基本給、諸手当の額といった「労働条件」です。この労働条件がどのように定められているかによって、未払い残業代の金額が何円になるのかが大きく変わってきてしまいます続きを読む

未払い残業代請求のポイント①…就業時間の記録

残業したのに、残業代を払ってもらえない」…労働相談の現場で、多くの相談者から寄せられるお悩みです。書店に行けば、労使それぞれの立場から書かれた「未払い残業代」の書籍が棚に並べられているのを見かけますし、ネット上では「残業代請求」を売りにした弁護士事務所のバナー広告を多く見かけるようになってきています。

一昔前なら、「仕事なんだから少しぐらいのサービス残業は当たり前!」というコンセンサスが労使双方にできていたのかもしれません。しかし、「男は仕事、女は家庭」といった価値観が過去のものとなり、労働者の権利意識が高まりつつある昨今では、もはやそのような考え方は通用しなくなってきています。経営者が「ウチは中小企業なんだから残業代なんかいちいち払っていたら潰れてしまうよ」といって、法律を知らない労働者を誤魔化すことができなくなりつつあるのです。 続きを読む

未払い残業代を払わせたい…申告・訴訟・労働審判

長年のサービス残業に耐えて働いてきたけど、もう我慢の限界。仕事を辞める決心が付いた。どうせ辞めるんだから、今までの未払い残業代もついでに請求してやれ…そう考える方は多くいらっしゃいます。しかし使用者に対して未払い残業代を払うように求めたところで、『ウチにはお金が無い』『残業の記録が残って無いから払う理由が無い』『○○手当に残業代を含めており、全部支払済みだ』と、剣もほろろに突き返されてしまうケースがほとんどと言って良いでしょう。

使用者からこのように切り返された場合、労働者一人の力でそれを更に覆すのは非常に困難です。まず不可能と言えるでしょう。それでは泣き寝入りするしか無いのでしょうか? 続きを読む

有給休暇の相談…労基署からのアドバイスとは

ウチの職場では年次有給休暇を使わせてもらえない」「上司に相談したら、『パートには有給休暇が無い』と言われた」…このような悩みをお持ちの方は多くいらっしゃることでしょう。実際の労働相談の現場でも、ほぼ毎日と言っても良いくらい頻繁に寄せられる相談です。

以前のエントリーでも取り上げたように、年次有給休暇は、労働基準法第39条で認められた労働者の権利です。有給休暇を消化するのに上司の許可などは原則として不要であり、労働者が「○月×日に有給休暇を使いたい」と申し出たら使用者はそれを認めなければなりません(ただし、業務の正常な運行を妨げる場合は使用者側に日にちを変更する権利が与えられています。これを時季変更権と言います)。 続きを読む

有休問題…労働者と使用者、それぞれの事情

有休の悩みは途絶えること無く

人事労務管理に関する様々な問題の中で、使用者と労働者の双方ともに高い関心を寄せるのが「年次有給休暇」(以下「有休」とも表記)です。とりわけ労働者の方からは、「職場で有休を使わせてもらえない」といったご相談が絶え間なく寄せられている状態が続いています。

「有休を使わせてもらえない」という相談者からよくよく話をお聞きしてみると、実は法的な意味での「有休が使えない」とは全く異なる悩みを抱えているケースが少なくありません。今回の投稿では、その辺りの話を書き連ねていきたいと思います。 続きを読む

時間外労働に関し、事業者が労働者にとるべき措置

厚生労働省が事業者に求める措置とは

今回も長時間労働の問題に関して取り上げます。

特別条項付きの36協定を締結すれば、限度基準を超過した法定時間外労働(以下「時間外労働」)を合法的に命じるられるようになることは前回ご紹介しました。「1年の半分を超えない」という制限にはかかるものの、特別条項付き36協定が締結された事業所においては月100時間超の時間外労働も理論上可能となります。この点について、若干の補足をしておきます。

前回のエントリーでも少し触れておきましたが、実のところ、国は必ずしも労働時間の延長を際限無く認めている訳ではありません。「過重労働による健康障害防止のための総合対策」(平成18年3月17日付 基発第0317008号)において、「事業者」(「使用者」とほぼ同義だが、それより若干狭い概念)に以下の措置をとるよう求めています。 続きを読む

日本航空パイロット及び客室乗務員の訴え

元パイロットと元客室乗務員が日航を提訴

今月3日と5日の両日、2010年大晦日に日本航空(以下「日航」)から解雇(以下「本件解雇」)された元パイロット及び元客室乗務員らが労働契約上の地位の確認(平たく言えば「解雇の無効」ということ)等を求めた訴えに対し、東京高等裁判所が判決を下しました。東京高裁はパイロットと客室乗務員の双方の解雇について地裁の判断を支持し、原告の訴えを退けたようです。

この裁判でどのような論点が争われ、原告と被告がどのような主張を繰り広げていったのか見ていきましょう。今回の高裁判決の元になった地裁判決では、以下の2点が争点となりました。(客室乗務員に対する地裁判決の全文はこちら続きを読む

日本年金機構の情報流出…マイナンバーは「絶対安全」か

過去最大の個人情報流出事件

マイナンバー制度を担当する甘利明社会保障・税一体改革担当相は6月2日の閣議後記者会見で、年金情報の大量流出問題が、マイナンバー制度の導入スケジュールに影響を与えるか問われ、「変更予定はない」と話した。

マイナンバーのデータベースは業務用のシステムと別に管理され、「厳重なファイアウォールで隔離されている」と強調。「今回の事案を検証し、絶対にこういう事案が起こらないよう対処していく」と話した。(ITmediaニュース2015年6月2日 19時01分更新)

日本年金機構から、およそ125万件もの個人情報が流出した事件。この事件は新聞やTVなどのマスメディアで連日大きく取り上げられ、過去最大の個人情報流出事件を招いた日本年金機構に対する批判が高まっています。 続きを読む

懲戒処分と降格人事の妥当性…セクハラにあたる言動とは

セクハラによる懲戒処分と降格人事の妥当性が争われる

最高裁「セクハラ発言処分妥当」 処分無効の二審判決破棄

大阪市の水族館「海遊館」の男性管理職が部下の女性にセクハラ発言をしたことをめぐり、出勤停止の処分が重すぎるかどうかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷(金築誠志裁判長)は26日、「管理職としてセクハラ防止を指導すべき立場だったのに、みだらな発言を繰り返し極めて不適切だ」として処分を妥当と判断した

二審判決は処分を「重すぎて酷だ」と無効としていたが、最高裁はこれを破棄し、無効確認を求めた男性側の請求を退けた。(2015年2月26日 14時1分 共同通信)

部下へのセクシュアル・ハラスメント(以下「セクハラ」)が原因で出勤停止の懲戒処分を受け、そのために降格させられた元管理職らが会社を訴えていた事件です。

使用者から労働者への懲戒処分については、労働契約法15条で以下のように定められています。 続きを読む

年金マンガは女性蔑視!?大手マスメディアとネットとのズレ

またも問題視された年金マンガ

厚生労働省のホームページに掲載されている、公的年金制度のPRマンガ「いっしょに検証!公的年金」(以下「年金マンガ」)。この内容に対し、特に若い世代を中心として反発が強まっていることは、以前のエントリーでもご紹介しました。

主にtwitterを中心として、ネット上でこの話題が盛り上がっていたのが先月の半ばごろ。その後は徐々に沈静化していき、少なくとも私の知る範囲では、この話題に関する投稿を目にする事も無くなっていきました。ところが、ここにきて再びこのマンガへの批判が高まってきたようです

ネット上での「旬」はとっくに過ぎ去っているのに、何を今更?という疑問が湧くところではありますが、一体どういう経緯で年金マンガへの批判が高まってきたのか見ていくことにしましょう。 続きを読む