労働時間について、生じやすい誤解(前編)

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この間、私が受け付けた労働相談で「あれっ?」と思う出来事がありました。労働時間に関する内容です。

皆さんは、労働基準法(以下「労基法」)で定められた労働時間の限度をご存知でしょうか?これはお分かりの方も多いでしょう。そう、「1日8時間、1週40時間(従業員10人未満の飲食店や小売店等には、週44時間まで働かせられる特例有り。労基法施行規則25条の2)」ですね。間違えやすいのが、「週休二日制」に対する考え方。これは法律用語ではなく、単にマスメディアが広めた俗語に過ぎません。法律上は、「1週に1日、もしくは4週に4日以上」の休みを与えさえすれば良く、「週に2日休ませなさい」と定められてはいないのです。週の労働時間の上限が40時間ですから、1日の所定労働時間を8時間とすれば

40時間÷8時間=5日

となり、結果として週の所定労働日が5日になる、というだけに過ぎません。もし、月~金曜日の所定労働時間を7時間、土曜日を5時間と定めれば

7時間×5日+5時間=40時間

となり、「週の所定労働時間40時間&1週に1日の休日」という条件を満たしますので、週所定労働日が6日であっても合法ということになります。週に2日休ませないことが即違法となるわけではないのでご注意を。

話が多少脱線しましたが、今回取り上げたいのは別のテーマです。1日や1週間の限度は分かりましたが、それでは「1ヶ月」の労働時間の上限はどのように定められているかご存じですか?

法律を多少かじったことが有る方なら、「171時間」「177時間」「173時間」などと考えるかもしれません。しかし、これらはいずれも条件付きで認められるか、もしくは不正確な認識なのです!どういうことなのか、以下に見ていきましょう。

実は、労基法では、「1ヶ月」の労働時間の限度を具体的に定めてはいないのです。日、もしくは週の上限を守ってさえいれば、月単位で見たときに多少の数値の変動があったとしてもそれは問題無しとするスタンスなんですね。そうするとどうなるかと言うと、所定労働日と所定休日の定め方によっては、各月の総労働時間に結構なバラツキが生じます。

今年のカレンダーで、具体的に見ていきましょう。1日の所定労働時間が8時間、毎週月~金が所定労働日、土日が所定休日となっていて、国民の祝日を休日扱いしないという条件で考えます。給料計算の締切日は毎月末日です。この場合、今年の6月は所定労働日が20日、所定休日が10日になるので月の所定労働時間は160時間です。しかし翌7月は、所定労働日が23日、所定休日が8日(夏休みが無い場合)ですので、月の総労働時間は184時間となってしまいます。すなわち、6月と7月とでは月所定労働時間に24時間もの差が生じてしまうのです!まだまだ月額固定給が主流である日本の現状からすると、何やら違和感を感じてしまいますが、これは全くもって法的に問題の無い労働条件なのです。じゃあ171時間だの177時間だのといった数字はどこから出てくるのでしょうか?次回はその辺りを詳しくご説明します。

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