「過労死等防止対策推進法」とは

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今年の通常国会において成立し、6月27日に公布された「過労死等防止対策推進法」。同年11月1日が施行日と定められたのに伴い、厚生労働省で「過重労働解消キャンペーン」を実施中であることは、昨日のニュースで取り上げた通りです。

この「過労死等防止対策推進法」ですが、具体的にはどういう内容の法律なのでしょうか?「過労死」「防止」「対策」といった言葉が名前に含まれているのですから、残業を月に100時間させた雇い主には罰則を適用するだとか、労働者を過労死させた雇い主に対して巨額の賠償金を義務付ける法律ができたかのようにも思えます。今回のエントリーでは、その辺りを取り上げてみましょう。

実際の条文はこちらです。全5章、14条の大変短い法律ではありますが、法律独特の言い回しにより一般の方々にはなかなか内容が理解しにくいかと思います。以下に、ポイントとなる個所を箇条書きにしていきましょう。

  • 過労死等』という言葉について明確な定義を加えた
  • 国が負う責務、地方公共団体、事業主、国民のそれぞれが負うべき努力義務を規定した
  • 毎年11月を過労死等防止啓発月間と定めた
  • 政府に、国会へ報告書を毎年提出する義務を課した
  • 政府に、過労死等の防止のための対策に関する大綱の策定及び公表の義務を課した
  • 国は、過労死等の実態に関する調査研究等を行う
  • 国及び地方公共団体は、過労死等の防止について国民に広く啓発活動を行う
  • 国及び地方公共団体は、過労死等に関する相談の受け入れ及び適切な対処等のための体制を整える
  • 厚生労働省に、非常勤の委員で構成される過労死等防止対策推進協議会を設置する

ざっとこんなところでしょうか。あえてこういう書き方をしますが、「過労死等防止対策推進法」で定められた内容はたったのこれだけです。どこにも、「月100時間の残業は刑罰の対象」だとか「労働者を過労死させた雇い主は巨額の賠償金を払え」などとは書いていませんね。もっとも、もしそのような法律が出てこようものなら、法律案が閣議決定された時点でマスメディア等に大々的に取り上げられることでしょう。この「過労死等防止対策推進法」はそうならなかったのですから、その時点で内容はお察し、ということです。

それではこの法律が成立したところで何の意味も無いかと言えば、私はそう思いません。「過労死等」という言葉が明確に法律上の文言となったこと、報告書の提出や大綱の策定、調査研究等に過ぎないとはいえ国や政府に過労死関連の職務を課したこと、厚生労働省に専門の協議会過労死の被害者遺族や労働者代表、使用者代表、専門家の中から委員が選ばれます)が設置されたことには、相応の意義が有るのではないでしょうか。

過労死の問題は、日本企業に長年根付いてきた価値観や企業風土等も絡む問題であるため、簡単には解決できません。この法律が、より良い職場環境の実現に向けた第一歩となることを期待したいと思います。

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